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学校訪問

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理事・吉岡俊樹が、保護者の方の視点に立って学校・先生・児童たちの魅力をお伝えするページです。いろいろな学校のことをもっと知りたいというご要望にお応えして、新設校や今注目されている学校を訪問し、先生方にお話を伺います。

第9回

西武学園文理小学校
(取材:2012年5月)

佐藤仁美 学園長・校長

西武学園文理小学校
1981(昭和56)年 西武学園文理高等学校開設。1993(平成 5)年 西武学園文理中学校開設。2004(平成16)年 西武学園文理小学校開設。1988(昭和63)年 文理情報短期大学開設。1999(平成11)年 西武文理大学サービス経営学部開設。2009(平成21)年 西武文理大学看護学部開設。1966(昭和41)年 西武栄養料理学院。1972(昭和47)年 西武調理師専門学校開設。1978(昭和53)年 西武学園医学技術専門学校開設。文理高等学校卒業生(OB)の会/東京大学連絡会/国公立・私立大学医学部連絡会
http://www.seibubunri-es.ed.jp/

—『英語のシャワー』によって世界の新トップリエリートを育成するとうたう御校の学校説明会にうかがった際、英語で学校紹介している様子を目の当たりにしました。保護者の方にも英語で語りかけるという手法にはどのような狙いがありますか。

佐藤:英語だけを使おうと決めているわけではありませんが、文理では、英語を受験科目として捉えるのではなく、生活の一部として英語を使うという位置づけです。そのような環境を保護者の皆さんにも体験していただきたいという気持ちがあります。司会を担当するにしても、日本語で呼びかけるのと英語を使うのではで、テンションが変わってくるといいますか、距離感が違ってくる部分があるんですね。そういうことを実際に体験していただくことも大切だと思うのです。

—英語での学校紹介に戸惑いの表情を見せていた保護者の方も見受けられましたが、英語に関しては子どもたちの方が抵抗はないようですね。

佐藤:はい。子どもたちは、文理イマ-ジョン教育で音楽や体育の時間に身体を使いつつ、大好きな先生と明るく楽しく英語を話しながら一緒に行動することを、ごく自然に行っています。子どもたちには「英語だからうまく話せない」というコンプレックスがまだ芽生えていないのです。新しく単語を覚えるにしても、日本語の語彙をひとつ増やすのと大差なく覚えていきます。そしてスポンジのように言葉を吸収していきます。このとき、明るく楽しく学んでいくということが非常に大事だと思います。子どもたちの親御さんの世代も、中・高で6年、そしてまた大学で英語を学んだはずですが、英語でコミュニケーションできるレベルまで使いこなせる人はそれほど多くはないですよね。うまく話せないと恥ずかしいといった気持ちが先に立つと、頭では理解しても、口には出てこないのが外国語です。失敗してもいい、間違えるのは当たり前、明るく楽しく学んでいこうという環境があれば、語学はグングン上達していきます。

—そのような環境での学習が基本であれば、在外経験、あるいは海外赴任の予定がある保護者の方にとっては特に魅力的ですね。

佐藤:そうですね。実際、海外赴任経験のある保護者の方が多いという印象があります。また、海外赴任がすでに決まっているというご家庭もあります。たとえば、3年たったら帰国するので、また文理で学びたいというようなご相談を受けることも珍しくありません。そのようなケースは喜んでお迎えしています。一般に、帰国子女はクラスに馴染むのに時間がかかることがあるようですが、当校ではあっという間にクラスに溶け込み、人気者になります。英語だけでなく、フランス語や中国語など、どこの国の言葉でも、外国語が話せるとみんなで評価する空気ができあがっているからです。また、異文化を吸収したいという児童の向上心もあります。ですから、その国の言葉を教えて欲しいという子も出てきます。みんなに教えることで、その子も現地の言葉を忘れずに学び続けることもできますし、クラスの子は新しいカルチャーに触れることで世界が広がるわけですから、双方にとってプラスです。

—異文化を排除するのではなく、積極的に受け入れることを小学校から学ぶと、将来への影響も大きいですね。

佐藤:世界から見れば日本は国土も狭いですし、人口も少子化で減少していきます。今の子どもたちが大人になったとき日本はどうなっているでしょうか。先の大震災のような自然災害を含めて、今の私たちが想像できない未来が待っているかもしれません。そんな不透明な未来に向けて、地球人の一人としての子どもたちに、確かな財産を残したいというのが我々の、また親御さんの願いです。英語というのも、その手段のひとつでもありますし、英語圏に限らず海外生活の経験というのは財産です。また、ネイティブの先生方もさまざまなバックグラウンドをもっていますので、先生方の話からもグローバルな観点からものを見ることを学びますし、さまざまな文化を受けいれる土壌が出来てくるのだと思います。

—グローバルに向きすぎると、伝統として受け継がれてきた日本人の美徳や日本人としてのアイデンティティが薄れてしまうという懸念はありませんか。

佐藤:真の国際人としてリーダーシップを発揮できる人間になるには、おっしゃるようにまず日本人としてのアイデンティティを持つことが肝要です。日本人は礼儀正しく、チームワークが良い国民だと世界から評価されていますが、そういったことは一朝一夕に身につくものではなく、幼いころからの習慣が作り上げていくものです。そこで文理では、挨拶の励行はもちろんのこと、多彩な行事を通してみんなで協力して物ごとを成し遂げることを学びます。行事はさまざまありますが、たとえば、当校の田園を利用して、田植えや稲刈りを子どもたちが体験します。これには、ご両親やおじいさま・おばあさまも参加されます。都会育ちの親御さんにとって、田植えの経験自体、当校の行事が初めてといったケースもありますから、ご両親も、またネイティブの先生たちも童心に返って子どもたち同様に大はしゃぎ。皆、一体となって楽しみます。3世代にわたって参加する行事が多いので、こういった機会にも伝統や礼儀、周囲に対する配慮などを人生の大先輩から学んでもらいたいと思っています。

—創立が2004年とまだまだ若い学校ですが、ご両親だけでなく、そのまたご両親がOB・OGのように学校を盛り立てていくのですね。

佐藤:近年の核家族化によって、おじいさま・おばあさまからいろいろなことを直接学ぶ機会が減りつつあります。そこで、文理小ではおじいさま・おばあさまから話を聞く機会を積極的に設け、保護者参加の行事では、おじいさま・おばあさまからスピーチをいただきます。田植えの際には、命の大切さについて語ってくれる方、環境問題を論じる方などテーマはさまざまです。またスピーチを英語でなさる方もいらして拍手喝采、会場が沸きます。教員を含めた全員が文理ファミリーとしての絆を感じる瞬間は、見ていても感動します。おじいさま・おばあさま方は約500人の子どもたち全員を孫のように思って接してくださいますので、子どもたちにも自分の家族と同様に学友のおじいさま・おばあさまを敬う気持ちをもってもらえたら嬉しく思います。

—そのような行事をと通して学校の教育方針や安全対策に信頼を置いているから、子どもや孫を海外研修に行かせることもできるのでしょうね。御校の海外研修は、5年生でイギリス・イートン校やオックスフォード大学やケンブリッジ大学を訪問し、6年生でアメリカ・ハーバードやMITを訪れ、その上、国連学校の児童との交流するなど、一般にはなかなか体験できないプログラムですが、この経験によって子どもたちはどう変化しますか。

佐藤:初日はさすがに心細いのか子どもたちは青白い顔をしていますが、順応性の高さにはびっくりします。たとえばイギリスでは、世界各国から研修に来ている友達と生活を共にします。そこでさまざまな国の子どもたちと会うんですね。その子たちとルームメートになると、会話も弾み、見違えるように積極的になって、どんどん友達が増えていきます。本校では、CA活動(Creative Activity創造活動)という授業を取り入れており、大正琴や珍しいものでは、里神楽等をやっております。イギリスでは、その里神楽や大正琴、よさこい(日本文化踊り)などを他国の皆さんに披露するのですが、日本でやるときよりよりずっと気合が入っているのか、パフォーマンスをとおしてたくましくなっていくのを実感します。大人になってからの体験と子どもの頃の体験では、いわば純度ともいうべきものが異なるのだとつくづく感じます。体験ひとつひとつのインパクトが大きく、後々まで心に響くのですね。

—エリート校でさまざまな国籍の人々と交わることで、幼いうちかちエリート意識も芽生え始めるのではないかと思いますが、エリートとはどのようなものだとお考えでしょうか。

佐藤: エリートという言葉は誤解が生まれやすい言葉ですよね。私が考えるエリートとは先ず人格のエリートです。たとえば人間国宝の鍛冶職人さんは、天賦の才にも恵まれていたかもしれませんが、それ以上に技を磨くことに骨身を惜しまず自らの理想を一心に追い求め、その高みにのぼったのです。そのたゆまぬ努力こそがエリートを生んだと考えます。(ですから、エリートになるのは)本校では、さらに、新トップエリートと表現しておりますが、常に高き志を持ち、その志を常に自覚し、努力を惜しまないことに加え、豊かな社会で育った今の子供たちにとかく欠けがちな、チームワーク力、創意工夫や日本人としてのアイデンティティはもちろんのこと、逞しさ、耐える力、這い上がる力といった生命力、そして、精錬された力を備えたグローバルな視野をもった人間を指して、世界の新トップエリートと表現しているのです。その志の基になる第一番目が、幼いときに思い描く将来の夢ですから、文理小学校では、夢を描こうという教育をしています。

—まず夢を持つことろから始まるのですね。

佐藤:はい。大きな夢を描く力が大事なのです。そこで当校では公の場で自分の将来の夢を発表する場を設けています。どんなに突飛な夢でもみんな拍手でその夢を応援します。子どものことですから、今日はお医者さまになりたいと思った子が明日はパイロットになりたいということもあります。小学生のうちはそれでもいいんです。また夢は、社会的評価が高いものである必要はないのです。社会の役に立つことを自らみつけて「こうなりたい、こうしたい」と自主的に思うことが重要です。文理の子どもたちはご家庭にも恵まれています。小学校から私立に行かせようという、子どもの教育や子どもの将来に対して強い関心のあるご家庭は、子どもが持っている可能性を伸ばせるだけ伸ばしたいという考えに共感してくださっていると思うんです。どの分野に進んでもきちんと社会の役に立てるように、あるいはその子なりの全力が尽くせるようになって欲しい。文理小で、その子の可能性の「伸びしろ」を増やして欲しいと思います。小学校で自分の限界を決める必要はないんです。「あなたの可能性は無限大だよ」と親御さんも言い切って欲しいと思います。

—リーダーシップについてはいかがでしょう。クラスの全員がリーダーになることは考えにくいのですが、国際人としてリーダーシップを発揮できる人材とはどういう人物でしょうか。

佐藤:私自身ハーバード大でグループディスカッションをした経験があります。デスカッションを行うには準備が必要になりますが、そのとき、タイムキーパー役、データの出典確認担当など、目立たないけど欠かすことのできない重要な役割の担当が速やかに決まっていくのを目にしました。リーダーシップというと、トップダウンで自分の意見を押し通すというイメージを思い浮かべるかもしれませんが、そうではありません。本校が求めているリーダー像は、メンバーの幸せを願い、努力できる人間です。お互いに長所を認め合い、受け入れられる人間です。その場にいるメンバーの適性や長所を見極め、よい部分を最大限に引き出していける人、常にチームのメンバーのことを考える人が真のリーダーであると思います。

—リーダーシップと協調性は相反するものではないのですね。

佐藤:はい。子どもたちが将来仕事で目的を成し遂げるには、多くの人の力を借りることになります。そのためには、みんなと協力・協調しながらベストを尽くしていかなければなりません。集団での行動はリーダーシップを育むためにも必要な経験ですので、当校では小学校1年生のときから宿泊研修を行っているのです。

—御校の一期生はいま中学3年生です。独自のカリキュラムで育った文理小の子どもたちが文理中学、高校と進めば、志望大学の幅もまた変わってくるかもしれませんね。

佐藤:そうですね。文理小の子どもは、英語に馴染んでいます。また「Reveal your ambition to the havens./汝(あなた)の夢を星に語れ」という標語を掲げているように、将来の理想を持っています。活躍の舞台を日本国内に限定せず、国際社会の中で人の役に立ちたいといった夢あるいは志をもち、それを表現できる子が多くいます。中学から入学した子たちはその点に圧倒されるようです。いっぽう、中学から入学した子たちからは、受験勉強を経験しています。文理小の子は受験とは無縁で勉強をしてきましたので、受験というものを意識し、いい刺激を受けています。お互いに刺激となって相乗効果があがっているようです。もちろん高き志を持つことは学園全体の理念なので、そこは変わりません。高校開校以来、子どもたちを見てきていえることは、学校が大好きで、ご両親やおじいさま・おばあさまに可愛がってもらい、自分の夢を家族に肯定されている子どもたちは必ず伸びるということです。文理小で描いていた夢を是非実現してほしいと思います。

取材を終えて

従来の「校長」という概念には収まりきれないひとみ先生。創立者の娘という立場も加わって誤った印象を持たれることもあるようですが、教育に関する知識と熱意は際立っています。それは子供達からの人気に反映されていると感じました。校内を回っていると、驚くほど多くの児童から「校長先生!」と声がかかり、親しげに近寄ってきます。
もう一点、印象的なのは指導員育成への姿勢です。校舎をジャックの模擬テスト会場としてお借りした際、いつも新人の先生が見学なさいます。入試を模倣している私たちから見るととても意外なことなのですが、文理の先生方にとっては至極当然のようです。あらゆる機会を育成・向上の場とする精神が貫かれていると感じました。(吉岡俊樹)

写真で紹介

教会を思わせる文理アカデミーホール。約300名収容可能で、学習発表会や保護者会、学校説明会などもここで行われる。説明は常に、英語と日本語両方を使って行われる。

ディベートや模擬裁判、プレゼンテーションの練習などで使われるグローバルコミュニケーションルーム。ここでの説明等は、明るい英語で爽やかな雰囲気で進む。

みんながお待ちかねの給食の時間。その日の給食の献立を写真に取り込んでホワイトボードに投射。ALTの先生と一緒に給食を食べて、英語で会話を楽しみます。放送は、英語のクイズが流れています。

5年生の英国短期留学・6年生のアメリカ研修で訪れるオックスフォード、ハーバード、ケンブリッジ、MITの各大学紹介が掲示されている。

英語の掲示の隣に貼りだされているのは百人一首。百人一首で行う「かるた大会」は同校の恒例行事のひとつで、練習は、縦割りのグループ(上級生が下級生を指導する)で行い、まるで兄弟同士のような光景がくり広げられる。

廊下、階段、お手洗いの表示まで、英語、フランス語、イタリア語、スペイン語などで書かれており、国際色豊か。

全校児童が海外に出かけた時に佐藤校長宛に届いたカードや、海外研修に出かけた5-6年生から届いたカード。佐藤校長が励ましの言葉を)一言書き添えている。

(左) 海外研修の思い出の品々を集めたエリートルーム。世界の一流大学のペナントと、そこを訪れた文理の子どもたちの写真がずらり。

(右) 文理から東大に合格した卒業生たちのコメントや、東大にゆかりのある文理ファミリーの著書などが並べられた東大コーナー。この他に宇宙コーナー、ノーベル賞コーナー、医学部関連コーナーなどもある。