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学校訪問

みんなキラキラ

理事・吉岡俊樹が、保護者の方の視点に立って学校・先生・児童たちの魅力をお伝えするページです。いろいろな学校のことをもっと知りたいというご要望にお応えして、新設校や今注目されている学校を訪問し、先生方にお話を伺います。

第6回

小野学園小学校
(取材:2010年4月)

小野時英 理事長・校長

学校法人小野学園 小野学園小学校
1932(昭和7)年に京南家政女学校として設立。1938年、大井高等家政女学校設立。1946年、大井高等女学校設立。1948年大井女子高等学校設立。1952年、大井小学校を開校。1957年、小野学園小学校に校名を変更。2002年新校舎完成。
http://www.onogakuen.jp/syo/

—御校は、女子にとっては幼稚園から高校まである一貫校ですが、そのなかでの小学校はどのような位置づけにあるのでしょうか。

小野:小野学園は、今年創立78年目になりますが、中学・高校があるので、もっと小さい頃から育てたいという教育者の思いがあり、60年前に幼稚園と小学校を設立しました。当初は小野学園の教育理念に賛同してくれる方が幼稚園から高校まで子どもを通わせるという流れでしたが、現在では幼稚園の園児が約500名いるのに対して小学校は1学年1クラスで40名ですし、外部から小学校から入学したいという希望者も増えてきました。
その結果、現在では幼稚園から小学校に上がってくる人数と、外部から小学校を受験する人数の割合は1:4ぐらいです。その意味では一貫校というより、幼稚園、小学校、中学、高校と、それぞれに小野学園の教育理念に基づいて、質の高い教育を行っている学園といえると思います。

—小野学園小学校の男子は中学受験が基本だと思いますが、女子も外部に出るケースが多く、受験体制も整っていると伺っています。小学校から外部に出る女子の割合はどの程度でしょうか。

小野:女子は1クラス20名で、特待も含めて推薦入試で中学に上がれる形になっていますが、実際は小野中学への推薦を受けても外部に出ることができます。年によって異なりますが、女子の半数である10名か、それ以上の人数が外部に出ます。

—それだけ「中学受験に強い」という見方ができると思いますが、学力を伸ばすポイントはどこにありますか。

景山壽貴 教頭

景山:授業数自体が多いということがまず挙げられます(新指導要領移行後の6学年標準総授業時数5645に対し、同校の授業時数は6621)。
授業は教科書の他に小野のオリジナルテキストで各単元の理解を深めていき、さらに問題集を使っています。そして5年生では学期ごとに、6年生では毎月月末に模試を行います。学校内の成績はある程度の目安にはなりますが、これだけだと井の中の蛙になりかねませんので、客観性のある進路指導を行うためにも外部の模試を活用しています。
模試は、普段使用しているテキストに基づくものではなく、敢えて別の出版社のテキストに準じた模試を受けさせます。そうすることによって点数が低めに出ますので、取りこぼしの部分を補完し強化していくというやり方をとっています。

—受験に備えたカリキュラムが御校の特徴でしょうか。

景山:中学受験に向けては、教材研究をして指導にあたるというのは当然のことですが、毎年受験をさせていくなかで、ドリル学習とか問題集をこなすだけでは合格できないということがわかってきたのです。というのも試験は一回勝負ですので、たとえ学力があっても心が安定していないと、試験に受からないことがあるんです。先人もいっていたように、知力だけでなく、気力と体力が必要なんです。そして学習意欲と根気です。やり始めたことを途中で投げ出すことなく、最後まで諦めずに粘り強く継続して行う。それによって、達成感を味わうことができ、分かる喜び、知る喜び、できる喜びが生まれてきます。

—それは、建学の精神のひとつに謳われている「学習と生活のつながりを総合的にとらえ、意欲と根気のある学習態度を育てる」にもつながりますね。

景山:はい。「最後までやりぬく」という姿勢をもって学ぶことが重要になります。また、行事を重視することも、「生活と学習を総合的にとらえる」という精神の一環です。なぜ行事を重視するかといえば、やはり机上の学習だけでは学べないものがあるからです。教室での座学は個々の学力を伸ばすことはできても、社会性を育てることはできません。学校行事に参加することによって、協力、責任、寛容、奉仕の精神が身についてきます。行事は先生たちが中心になってさまざまな企画を立てますが、教師の力だけでは限りもありますので、高学年の児童に会場づくりなどを手伝ってもらいます。ひとつの目標に向かって教師や周囲と協力・協調しながら、他者あるいは下級生のために動く・働くといったことで社会性が養われます。

—御校は進学校でありながら、学校行事が多いので、その両立は大変ではないかと思います。その点で保護者の方の反応はいかがですか。

景山:「なんでうちの子をこんなに働かせなければならないの?」「塾があって忙しいのに…」といった声もありますが、子どもの社会性を育てることは、本来家庭教育で行われるべきことです。けれども、それができる家庭が少なくなっているから、社会性のない大人が増えているというのが現状です。せめて小野学園の卒業生だけでも社会に貢献できる人材になってほしい。そのための学校行事ですし、それを通じて学んだものは10年、15年先にも必ず活きてきますから、目先の受験結果よりもよほど重要なことなのです。
こういうお話をすると、お母さまよりも、お父さまに理解していただけるんですね。お父さま方は、仕事を通して「学歴は高いけれど、組織で働くことが苦手」という人を周囲で見ていますから。ですから、お父さまの方が学校行事の重要性を理解し、その意義をお母さまに説明してくださることもあります。また当初は「忙しいのになぜ行事をするの?」といっていたお母さまも、子どもの成長を実感し、学校の意図を理解してくださるようになります。卒業する頃には「この学校に来てよかった」といっていただけるように、教師は全力を挙げて努力しています。

—保護者のみなさんも小学校の生活を通して多くを学ぶわけですね。

景山:卒業式の後に謝恩会をやりますが、そこでお母さま方から「一番成長したのは、子どもより私かもしれない」という言葉をいただくんですね。「小野学園で子どもと一緒に成長した」と保護者の方が言ってくださると、本当にありがたい。保護者の方は6年間子どもを預けているのですから必死ですし、6年間担任が変わりませんので、互いに素になってとことん話します。初等教育というのはドロ臭い部分もあります。「お母さんの考え、おかしくない?」と意見することもあります。そういうぶつかり合いを経た6年間になりますから、子どもだけでなく、「保護者の方とともに歩んでいく」というのがこの学校の特徴かもしれません。

—ぶつかり合いというのは、主にどのようなことについてでしょうか。

景山:やはり人間関係についてです。20年前は、兄弟がいるご家庭が多かったので、子ども同士のケンカの対処法を親は知っていました。今は一人っ子が多く、母子が一卵性双生児のようになって、我が子サイドでしかモノが見られない、子ども同士がケンカすると親も気まずくなる、といったことが出てきます。そういうときは、「子どもの社会性を育てようといっているお母さん自身が、それをできていないじゃない。まず自分が変わらなきゃ」と意見します。後で聞くと、お母さまは「なぜそんなことを言われなきゃならないの?」と憤慨したそうですが、ご主人にも説得されたりして、成長するんですね。そして何年か後、下級生のお母さまが当時のご自分と同じように主張しているのを見て、今度は意見する方にまわる(笑)。
生涯教育という言葉があるように、教育は一生涯続くものですから、保護者の方も子どもと一緒にちゃんと階段を上っているんですね。そういう成長を遂げた方こそ、小野学園に対して愛校心を抱いてくれます。それが私たち教師にとって本当に嬉しいことなのです。

—6年間担任が変わらないと、子どもの成長が如実に分かりますね。一方で、先生の負担も大きいのではないでしょうか。

景山:それはもう、相当なプレッシャーです。なんといっても受験で結果を出さなければなりませんから、6年生の担任になると10年は老け込む思いです。でも、それが達成感につながりますし、我々のモチベーションも高まります。
私は今年の3月に6年生を送り出しました。6年前に卒業させた子どもたちはちょうど大学受験です。6年間手塩にかけた子どもたちですから、結果報告に来てくれるんです。20人しかいない男の子ですが、東大、京大、東北大、千葉……と合格報告が続きました。「よくがんばったね。何が勝因だったと思う?」と東大に合格した子に訊ねたところ、「先生、やっぱり精神力だよ。そして小学校で教わったように、出された課題を遅れることなく、納得いくものを期日内に提出する。これをきちんと守っていれば、本物の学力がつく。大学の名前は関係ない」と言っていました。

—小学校で正しい学習習慣を身につけることがいかに大事かわかるお話ですね。ところで、御校では学力だけでなく、運動会での成績なども学内に掲示するなど、競争の結果を公表し、優秀者の顕彰をなさっていますね。順位や優劣をつけることを避けようとする風潮が一部に見られるなかで、このように順位を明確にする学校は珍しいのではないですか。

景山:競った結果をきちんと受けとめるということをしていかないと、受験で結果を出すことはできません。公表された結果をみて、「来年はがんばろう」と奮起すれば、それがひとつのことに一生懸命取り組むモチベーションにつながります。うまくいかなかった、あるいは努力をしなかったのにもかかわらず、おいしい話だけしていたのでは、6年間責任を持って育てることはできません。改善を図るためには子どもたちや保護者にとってイヤなことでもストレートにいう必要があります。そういう学校は確かに少なくなっているのかもしれませんね。
受験というのは、煮詰めていけば、受かるか落ちるかなんです。でも学力だけがすべてではない。ペーパーテストはあまり得意でなくても、走らせたらいつも上位にいるとか、音楽に才能があるとか、4教科以外で得意科目がある子もいます。そういう子も「よくがんばったね、すごいね」と顕彰すればどんどん伸びていきます。学力も中学に入ってからあるいは高校でグンと伸びるかもしれません。ペーパーで結果を出す学力だけに偏重しすぎると、試験に落ちたら何も残りませんが、人間性をきちんと育てておけば子どもたちが社会に出たときに財産として残るんですね。それが本物の教育だと思います。

取材を終えて

ひとことでいえば、気骨のある学校。話を聞けば聞くほど、昭和にタイムスリップしたような気分になります。授業は週6日制を維持し、運動会では徒競走で一等の子を集めて決勝戦を行い、保護者とはうわべではなく本音で話し合い、児童にも厳しく本気で叱る。そこには、懐かしい小学校の姿がありました。古き良き時代の、先生と児童の関係が残っていました。根底にあるのは、揺るぎない信念を持ち、愛情を持って正面からぶつかろうとする精神でしょう。
誤解を恐れずにいえば、保護者によって好き嫌いのハッキリ分かれる学校ですが、水が合う方には理想的な環境です。同じ“受験を目指す学舎(まなびや)”として、感ずるところの多い訪問でした。(吉岡俊樹)

写真で紹介

1年生のクラスの授業風景。1学年1クラス40名で、男女半数の構成になっている。

広々とした洗面スペース。お手洗いの入り口には、カラフルな絵が施されている。

体育館で行われていた新1年生入学歓迎演奏会の練習風景。同校では毎年11月に音楽会があり、それに向けて9月にオーディションを行って担当する楽器を決定するという。

廊下に掲示された3年生の作品。クラス全員が製作にたずさわり、児童各自が自分自身を表現している。この作品は、卒業するまで学校のどこかに提示される。

3月に行われた「なわとび大会」の成績一覧。学年全体で行うため、下級生が上級生より上位にくることも珍しくないという。優秀者には賞状が贈られ、それも学内に掲示される。

図書室に隣接したコンピュータルーム。PCで調べた結果を過信せず、必ず図書で確認する癖をつけるように指導している。図書室とコンピュータルームは敢えて仕切りをつくらず、行き来をしやすい構造になっている。