JAC幼児教育研究所

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年中児にとっても今が大切【2】 〜その子にあった塾を見極める〜

2008年10月 9日 18:08

一般的に、親は自分の子どもをレベルの高いクラスへ入れたがります。もちろん、ついていける力があれば、そこで頑張ればいいのですが、そうでない場合には無理は禁物です。なぜなら、子どもには自分の置かれている状況を冷静に判断することができないからです。例えば、スタートして既に数ヶ月経ったクラスに入ったとしても、子ども自身が出遅れを自覚することはできません。ですから、みんなができるのに自分だけができなければ、「自分はできない子だ」とか「自分はダメな子だ」と思い、悲しくなるだけです。しかも、そうした思いは、奮起にはつながりません。「できない」→「やりたくない」という、負の方向へ向かうのが普通です。
また、子どもの性格も大きく影響します。他の子よりできないことが大して気にならない子もいれば、誰かに少しでも劣っていることがものすごく嫌な子もいます。より注意しなければならないのは後者です。劣っていることを嫌う子は、「自分は他の子よりできるんだ」という自負心の強い子です。こういう子は元来受験向きです。無理のないクラスにいれば、「自分はできる」と思い込み、放っておいても勉強するような、勉強の好きな子になるでしょう。こうなれば、どんどんと力がついて、本当にできる子になります。ところが、無理やり高いレベルに入れ、「みんなはできるのに、自分はできない」という状況に置くと、結果は最悪です。「自分はできない」という状況から逃げるために、勉強が嫌いになり、努力もしなくなるでしょう。
母親も気をつけなければいけません。「始めた時期が遅いのだから、他の子と同じようにできないのは当たり前」と分かっているはずなのに、いざ自分の子だけができないのを目の当たりにすると、冷静ではいられなくなり、ついつい余計な声を掛けてしまいます。感情的になった母親は、「あなたね、ちゃんと聞いていないから、できないのよ」とか、「集中して考えないから、こんな問題も解けないのよ」と、なぜかマイナスの言葉ばかりを口にします。そうなると、ますます子どもは「自分はできない」と思い込み、勉強から逃げるようになるわけです。教師から見れば充分に素質のある、本来は高い能力を持った子であっても、一度こうなってしまうと入試に合格させるのは難しくなってしまいます。
 受験で本当に大切なのは、10月11月の入試本番に、最高の状態に持っていくことであって、それまでのプロセスは問題ではありません。富士山頂への登山道が何通りもあるように、合格までの道のりもさまざまです。急で険しい道を一気に登りきる方法もあれば、なだらかな道をゆっくりと時間をかけて登っていく方法もあるのです。
 レベルの高いクラスにポンと放り込んで、厳しい言葉を掛けながら育てるのも一つの方法かもしれませんが、それだけが合格への近道とは限りません。一つ手前、二つ手前から始めることが結果的には功を奏すということも、小学校受験ではよくあることです。塾やクラスを選ぶ際には、その子の能力や性格を考えるのはもちろんのこと、子どもを厳しい環境に置いた場合でも母親自身が親として冷静にフォローできるのかをじっくりと考えた上で、それぞれにあったレベルを選ぶべきです。
 なお念のために付け加えますが、その子に合った塾やクラスを見極めるためには、入会を決める前に子どもに実際の授業を体験させ、その様子をじっくりと観察することが肝要です。体験している様子を見られないのでは正しい判断ができません。母親が教室内で参観することは、必要不可欠な要素と言えるでしょう。<2006年10月12日掲載文>

〜次回の掲載は10月20日(月)の予定です〜