ジャック合格特集 2022

Overview
理事の総括

来年への飛躍を目指して
2022年度入試の振り返り

ジャック幼児教育研究所
理事 大岡史直

今年の入試を振り返って

01

コロナ禍の影響は?

横浜雙葉小学校で自由遊びやお弁当の考査がなく、青山学院初等部で適性検査(個別テスト)がペーパーで出題されるなど、今年もコロナ禍の影響が見受けられたものの、行動観察を実施する学校が昨年に比べて増えるなど、確実にコロナ以前に戻りつつあるように感じる。なかには、モニターで見たダンスを二人一組で踊る(白百合学園)、絵を見て相談してお話作りをする(聖心女子学院初等科)、といった、子供同士の会話を必要とする考査が行われた学校もあった。

9月から10月にかけて新規感染者数が激減したとはいえ、入試内容は夏休みから9月にかけて担当の先生が考えるので、東京都で1日1,000人台の新規感染者がいた9月中旬には考査の内容は決まっていたことになる。つまり、学校はある程度のリスクがあったとしても、受験者の態度や様子を見たがっているということだ。来年の入試に向け、行動観察が大事な要素になることは間違いない。当研究所では、感染状況が落ち着いていれば、今年度から「女子校向け 行動観察模擬テスト」の開催を春頃に予定している。

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02

合否の鍵は子どもの性格だけでなく考査内容との相性

保護者から「子どもに合っている学校はどこですか?」と聞かれ、「学校に入ってからですか?それとも入るためにですか?」と聞き返すことがある。保護者は入学後を指していることが多いようだが、入試内容が合っていなければ入学することができない。

小学校受験では、偏差値はあってないようなものだ。なぜか?いろいろな理由があるが、ここでは「絵画」を例に1つだけ紹介しよう。

今年度、精華小学校では「野菜の運動会でかけっこをしました。一番が大根さん。自慢の葉っぱをゴールテープにひっかけてゴールしました。二番がトマトです。顔を真っ赤にして走りました。3番は玉ねぎさん。涙を流しながら走りました。4番のキュウリさんは途中で転んで膝を擦りむいてしまいました。今のお話を絵に描いてください」という考査が行われた。

一方、早稲田実業学校初等部では、「ダンゴ虫と傘」「鳥とえんぴつ」「海の生き物と椅子」等(考査日によって内容が異なる)を使った絵を描き、説明するという考査だった。(自分を描いても描かなくてもいい)。

さて、両校は何を見ているのだろうか。精華小学校が、画力と話を聞く力を見ていることは明白だが、早稲田の“一見つながらない2つのものを描く”という課題をこなすには、画力に加え、想像力や、何とか描こうとする強い気持ちが必要になる。

このように、同じ「絵画」でも評価のポイントが違うので、早稲田に受かって精華に落ちることは珍しくない。ちなみに今回も、精華にご縁を頂けなかった女の子が早稲田に進学することになった。しっかり話を聞いてその内容を正確に表現することが得意な子もいれば、短い時間の中で自由な発想で描き、テスターからの質問に答えることが得意な子もいるのだ。ただし、まずは人、動物、食べ物など、一定の画力を身に着けることが最初のステップになることは言うまでもない。

参考までに、「学校別クラス」や「絵画製作」の授業を通して準備した子どもたちが、実際の入試でどんな絵を描いたのか、どんな説明をしたのか、一部紹介しておく。

1)精華小学校 野菜の運動会

野菜の運動会

2)早稲田実業学校初等部

 A)ダンゴ虫と傘

ダンゴ虫と傘

「雨の日にダンゴ虫が濡れていたので、傘をさしてあげている絵です」

 B)魚と椅子

魚と椅子

「僕が竜宮城に行って、魚達を見ながら手をたたいて喜んでいます。僕はお食事をしながらみています。魚達は音楽にあわせて踊りを踊っています。」

 C)鳥と鉛筆

鳥と鉛筆

「カラスが落ちている鉛筆を拾ってきて、巣作りしているところです」

 D)アリと虫取り網

アリと虫取り網

「小さなアリを虫取り網で他の虫たちから守っています。アリの巣は小さなお部屋がたくさんあって、今それを太陽にあたりながら作っているのを守っています」

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03

噂に惑わされるな

従来、小学校受験ではきょうだい関係や卒業生の子弟が有利と言われてきた。しかし、最近の合否を見る限りそれを感じない。

上の子と違う学校を受けると、面接で「ごきょうだいと違う学校を受験されたのはなぜですか?」と聞かれることがよくあるが、これは否定的な意図ではなく、納得のいく答えが得られれば学校側は合格させたいと思っているのだ。逆に言えば、在校生のきょうだいだから、卒業生の子弟だからということが有利に働くこともないのかもしれない。

「この学校に行かせたい」と思うのであれば、親が卒業生でないとか、コネがないといった一昔前の噂に惑わされることなく、信念を持って挑戦するべきです。

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04

慶應義塾横浜初等部 開校10年

初めて慶應義塾横浜初等部の入試が行われたときは、一次テストにペーパーがあることすら公表されず、「塾で準備してきた子が特別に有利にならないよう、出来るだけの配慮をする」という説明があっただけだった。ふたを開けてみると、今と同様、一次がペーパーで、二次が製作、体操、行動観察だったが、ペーパーは易しく練習問題もあった。

あれから10年。出題形式は同じだが、難易度は確実に上がっている。

1)話の記憶
例年は家族が登場する日常を切り取った内容だったのでしっかりと聞けば対処できたが、今年の女子の考査では、二次テストで使用されるような民話(和歌山県の民話 テングの面と娘さん)が出題された。「貧乏な家の女の子が金持ちの屋敷に奉公に出ることになった。その子は、大好きなお母さんの似顔絵と鏡を持って行き、寂しくなると鏡の横に置いた似顔絵に話しかけた。働き者で気立ての良い女の子に屋敷の男達は恋をするが、見向きもされない。そこで男達は似顔絵を天狗の面にすり替えた…」といったストーリーだ。話が長く、場面展開も多く、「お屋敷、似顔絵、親孝行、山賊、火をともす」など初めて聞くような言葉も随所に使われていたために、何が何だかわからなくなって途中で話を聞くのを諦めてしまった子もいたようだ。

このような出題がなされた背景として、①これまでも男子より難しい話を女子に出題していたが、それでも差が付きにくいため難易度を上げた。あるいは、②横浜初等部は「言葉の力」を重視しており、このような言い回しを理解できるような絵本を読み込んでいる子を良しとしている。といったことが推察される。

昔話や民話など、小学生が読むレベルの内容はわからないとしても、しっかりと最後まで聴く力を是非養ってもらいたい。

2)他のペーパー
今年は月齢による問題の違いがほとんどなく、他の三種類のペーパー(5つの絵を時系列に並べる・図形の白い部分と黒い部分が反転した図形を探す・同図形発見)も、早生まれのお子さんにとっては難易度が高かったように思う。

3)製作
二次テストの製作は、従来、画用紙や紙皿、モールなど色々な材料を使っての製作や粘土が中心だったが、昨年、初めて絵画が出題され、今年もそれが継続された。昨年はコロナ禍の中での入学試験だったため、材料を取りに行ったり、出来上がった作品で遊んだりと、子ども同士が接触する可能性のある課題は実施されなかったことが容易に推測される。さらに、今年も絵画だった背景には、前述の通り入学試験が検討されるのは夏頃であり、その時期の感染状況が影響したことが考えられる。

しかし一方で、二年連続絵画が出題されたということは、今後も絵画が続く可能性がないわけではない。二次テスト対策としての、製作と絵画の家庭学習のバランスを見直す必要に迫られている。

今年度の受験生は、男子808人、女子611人。そのうち一次テスト通過者は、男子約280名、女子約180名(推定)だった。当研究所からは、男女合わせて、4~6月生まれ30名、7~9月生まれ28名、10~12月生まれ23名、1~3月生まれ28名と、月齢考慮があるなかバランスよく合格していると思われる。実は、高月齢のお子さんほど、一次を通過するために高得点が必要で、今年の場合、4種類のペーパーで1~2問間違えただけで合格が危ぶまれた。一方、低月齢ならばそこまでの高得点は不要で、模擬テストで平均点そこそこの成績の子でも合格できる可能性が充分にある。実際、当研究所から、学習院(7人)、早稲田(6人)、青山(5人)、暁星(5人)、白百合(2人)、雙葉(2人)、といった学校に合格した高月齢のお子様が、一次テストで振るいにかけられた。

もちろん、一次を通過しても二次で不合格になれば結果は同じだ。しかし、製作力があったり、魅力的な会話ができたり、ずば抜けた運動能力を持っていたりして、一次さえ通れば二次も合格しそうなお子様がいるのも事実なのだ。当研究所で今年度から始まる慶應義塾横浜初等部習熟度テスト(4月実施)は、実際の入試に近い形式で、6枚のペーパー(話の記憶含む)を1回分として、2回分のペーパーテストで習熟度をはかるテストだ。横浜初等部を志望している中でのペーパーの立ち位置を知り、お子様に合ったペーパーと製作の時間配分をして後半戦の家庭学習を効果的に行うために、ぜひ活用して欲しい。(準会員・一般も受講可能)

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05

目黒星美小学校の英断

目黒星美小学校(以下目黒星美)は、10年程前から11月1日に行うA日程と、3日に行うB日程の入試を行ってきた。願書の提出はどちらも10月上旬。「11月1日なら受験しないが3日なら併願する」というご家庭にチャンスをくださったことと推察されるが、両方出願が可能なので、熱望組にとってはチャンスが2回あるありがたい制度だった。

今年は、B入試の出願を11月10日までにして、11月21日に試験を実施した。慶應、早稲田など一部を除く都内のほとんどの私立の発表が終わってから出願が可能な日程にしたことで、ご縁が頂けなかった子や志望校を再検討する家庭に門を広げた格好だ。多くの私立は、その学校に入学したいという熱望組から考査で点数が取れた順に入学を許可する形式だが、目黒星美は入学時の思いはそこまで高くなくても優秀なお子さんを入学させることに方針転換したように思われる。

大切なのは入学時の気持ちよりもどんな思いで卒業するかだと思う。素晴らしい先生、良きお友達と出会うことができたと愛校心が芽生えていることが大事なのだ。その意味では、今回の変更は自校の教育への自信の表れとも見て取れる。目黒星美の英断は受験者にとって朗報です。

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06

桐蔭の次世代の入試スタイル?

アクティブラーニングを実践する桐蔭では、意見の多様性を広げるため、今年度から「アドベンチャー入試」を始めた。評価基準は、「見えない学力」「生き抜く力」。「ペーパーなどは一切課されない行動観察のみのテストであり、今の習熟度より将来の伸びしろを計ります」との事前の説明通り、実際の入試も、全員で相談して遊びを決めたり、釣りをして遊んだり、先生のピアノの音を聞いて自分で考えて合うように歩いたり、走ったりと、体操、巧緻性、面接の要素を含みつつも、「出来た」「出来ない」を感じさせない楽しい内容だった。

20年程前に始まった女学館のAO入試や今回の桐蔭の「アドベンチャー入試」のような特徴ある選抜が増えることを期待する。なぜなら習ってきたスポーツ、音楽、芸術、英語などのお稽古事を中学受験のためにお休みすることなく、長く続けさせたいと考えて大学までの一貫校を希望する保護者も少なくないからだ。それに、何かに秀でている子どもを評価し入学させることで、周りの生徒にもきっと良い刺激があるはずだ。教育とは教えてもらうことだけでなく生徒同士が感化される2本立てなのだから。

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07

新設校 東京都立立川国際中等教育学校附属小学校とは? 

今年度、都立初の小中高一貫校となる「東京都立立川国際中等教育学校附属小学校」で新1年生の入試が実施された。

立川国際中等教育学校は、2008年に開校された都立の中高一貫校だ。開校以来、「質の高い指導陣のもとで高校受験に煩わされることなく勉強や運動に取り組みながら大学受験を目指せる。学費も無理がない」と、近隣地域の方に人気が高い。中学入試における難易度は偏差値60前後。昨年度は一般枠130名の募集に対し、600名が受験した(約4.6倍)。中学受験における超難関校ではないが、私立中受験で必要とされる問題を解き込む力とは異なる、総合的な理解力と思考力、表現力(論文)が求められるため、公立校志向の方の中の学力の高い生徒が集まっていると思われる。

また、2020年度大学受験の進学結果を見ると、東京大4名、京都大3名,一橋大、東京外大、学芸大などの国立大学や、早稲田32名、慶應12名、中央52名をはじめ多くの難関私立大学に現役合格者を出しており、6年間かけてしっかりと学力を養うとともに、手厚い進路指導をされていることがうかがわれる。

一般枠とは別に「海外帰国・在京外国人生徒枠」(各学年30名)を設け、外国語教育に力を入れていることも魅力だろう。「国際社会に貢献できるリーダーとなるために必要な学業を修め、人格を陶治する」を教育方針に掲げ、国際社会に目を向け、地球規模で物事を考え活躍する人材育成を図るための新しい取り組みをしている。

その「立川国際中等教育学校」に附属小学校が開校されることとなり、はじめての入試が行われたのである。

  • 目指す将来の姿:高い言語能力を活用して世界の様々な人々と協働するとともに、論理的な思考力を用いて諸課題を解決し、様々な分野で活躍する人材
  • 募集人数:58名(男子29名、女子29名)
  • 選抜方法
    ①第1次(抽選:志願者が一定の人数を超えた場合)
    ②第2次(適性検査:筆記(70点)、インタビューと運動(30点))
    ③第3次(抽選)

  • 東京都の発表によると、応募者数は、男子916名、女子881名(計1797名)。30倍以上の高倍率となった理由としては、学校所在地が立川市曙町(JR立川駅から徒歩18分)であり、東京西部の市町村部(八王子市、立川市等)に加え「新宿区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、練馬区」の区部も通学区域に含むため、都心からの受験者が加わり応募者が増えたことが考えられる。 

    入試の経緯を見ると、まず第1次抽選で男女とも200名ずつに絞られた。第2次適性検査は事前の説明会で示された出題例からも難易度は高くなく、総合的、基本的な準備で対応できると思われる。

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    08

    戦い終えて日が暮れて

    11月29日に慶應横浜初等部の結果が出てから、三週間が経ち、鎌倉 七里ガ浜の喫茶店でこれを書いている。

    例年のことだが、今年も、一緒に授業をしていて楽しく魅力ある生徒が希望校からご縁を頂けず、悔しくてならない。向上心があり、運動神経がピカ一で、チーム戦で負けたときは悔し泣きをすることもあった。集団の中にいてもとても光る子だった。夏頃には一回り心も成長し、「自分が負けても勝者を称えること」や「勝つことよりも大切なことがあること」、「切磋琢磨することの楽しさ」がわかるようになっていった。教室にこういう子がいると、まわりも感化され活気のある授業になる。夏になっても日焼けをする子が少ないなか、海の近くに住んでいるその子だけは真っ黒。授業中、私がご褒美にマジックを披露すると、睨みつけるような鋭い目でタネを見破ろうとするので、彼の前でマジックをするときは絶対に見破られないよう、いつも以上に真剣になった。

    実は私には、以前にも、好奇心が旺盛で親御さんもとても熱心だったが、希望校に合格できなかった心残りの生徒がいた。彼は、卒業後も塾のテストや全国模試などの結果が出るとちょくちょく見せに来てくれた。成績が良かった時に来ることが多いのだが、ときには、成績が落ちたから発破をかけて欲しいと来ることもあった。

    6年が経ち、彼は、来年の1月8日の函館ラサールを皮切りに、2月1日は早稲田、2日は聖光学院を受験するそうだ。必ずリベンジしてくれるだろうと、期待、否、確信している。

    今年度、希望が叶わなかった子ども達が、リトライして無限に広がる可能性を自分の手でつかみ取ることを、これからもずっと、遠い場所から応援しています。

    ねぇ何が見えるの全体 ねぇ何が見えるのアップ

     「ねぇ、何が見えるの」 横山 真弥 作

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