ジャック合格特集 2024
MenuClose

ジャック合格特集 2024

たくさんの
合格おめでとう

理事の総括

戦い終えて日が暮れて
~2024年度の入試を振り返って~

ジャック幼児教育研究所 理事 大岡史直

01「理事のこぼれ話」で伝えたいこと

小学校受験は親の受験と言われます。保護者主導で受験を志し、家庭学習、志望校の選択、願書、面接まで、その全てに親が深く関わるからです。
そこで、世間に知れ渡っていないちょっとした話を通して、少しでも小学校受験や子育てに役立つ“ヒント”をお伝えしようと、2023年11月からジャックのYouTubeチャンネルで「理事のこぼれ話」の配信を始めました。2回目に配信した「一流の先生とは」では、「生徒にわかりやすく教えるために常に学んでいる『学者』。楽しく教えることのできる『役者』。どこの学校を受ければ合格できるか、どのくらいの確率で合格できるかが見通せる『易者』。この三つが揃えば一流です」とお話ししましたが、これは、保護者にもそうあってほしいというメッセージです。

まず、『学者』。合格には、2月から始まる学校研究会に参加して志望校になり得る学校の試験内容を把握するだけでなく、『学者』のように、なぜそのような試験をするのかを徹底的に研究することが必須です。また、先生は、授業中、子どもにわかりやすく指導することに注力しますが、家庭学習では、わかりやすく教えるだけでなく、理解していないと思えばヒントを出したり、やさしい問題に差し替えて指導したりすることが必要ですし、それでもわからなければ、数週間あるいは数か月後回しにするなど、塾の先生とは違う『学者』の要素が求められます。
次に『役者』。子どもと保護者が1対1で行う家庭学習では、親に対する甘えが出たり、自分の感情を表に出してきたりするので、保護者には『役者』になりきって楽しく家庭学習をすることが求められます。
そして『易者』。志望校の選択では、保護者が通わせたい学校を選ぶわけですが、子どもの性格、得意不得意などを考慮することも忘れないでください。『易者』として、志望校選びの感覚をさらに磨いてほしいと思います。
毎週木曜日に配信される動画が皆様の合格を手繰り寄せる一助になれば嬉しく思います。

<12/28~1月の配信動画(予定)>

12/28(木)

小学校受験に体操が出題される理由

1/4(木)

受験相談会

1/11(木)

模擬テストの役割

1/18(木)

模擬テストを真剣勝負の場にするために

1/25(木)

受験は時間との勝負。がんばり過ぎない・後回しにする勇気を持つ

続きを見る

02多様化する行動観察
<慶應義塾幼稚舎、横浜雙葉小学校、学習院初等科>

例年、ペーパー、絵画製作、運動テストなどは合格点に達しているのに、行動観察が原因で不合格になるお子様がいます。入試では、行儀や立ち居振る舞いだけを観られているわけでは決してありません。
行動観察では、「ルールや指示を守って正直に行動できているか」、「自己中心的なわがままな態度をとっていないか」、「消極的で友達任せにしていないか」、「自分の思ったことや意見が言えているか」など、実にさまざまな観点から学校独自の評価をしています。

今年、慶應義塾幼稚舎では、「カラーコーン置きゲーム」が行われました。
【試験の概要】
子どもを4チームに分け、2 チーム毎に対戦させる。
正方形ジョイントマットが 9 個(3×3)結合して並べてあり、これをゲームのマス目として使用。1つのマス目に置けるのは1つのカラーコーンだけ。チーム で交互に置いていき、最後のコーンを置いたチームの勝ち。
【当日の様子】
最初にルールの説明があり、2人ずつ計4人の先生が見本を見せた。各チームの一番手同士がじゃんけんをし、先攻を決める。まずは、先攻チームの一番手が、チームカラーのコーンを 1 個か 2 個、マス目に置く。2個置く場合は隣りあったマス目に置き、斜めに置いてはいけない。コーンを置いたらチームの列の最後尾に並ぶ。列は立ち位置が示されていて、順番に詰めていく。続いて、後攻チームの一番手、先攻チームの二番手、後攻チームの二番手と順番に置いていく。同じチームの仲間同士、どこに置くのかアドバイスしあっていた。

この試験では、「ルールの理解ができるか」、「チームで相談した際は、相談した通りにコーンをおくことができるか」、「仲間が良くない所にコーンを置こうとしたときに騒がずにいられるか」といった基本的な性質に加え、「一手先を読んでどこに置けば勝てるのか」「勝ち負けにかかわらず、勝負がつく前に勝ち負けに気が付くことができるか」といったことから、頭の回転の良さも見られているかもしれません。



横浜雙葉小学校では、こんな「遊び」をしました。
【試験の概要】
1グループ約10人で、チームごとに同色の帽子をかぶる。
大きいカゴには、布製のサイコロ、膨らんだ風船、ゴムでできた大きな輪、お手玉3個。小さいかごには、フリスビーとチアリーディングで使うポンポンが入っている。
会場には、グループごとに遊ぶスペースわかるように、四つのコーンが置かれている。
【当日の様子】
先生から、「今からカゴにある道具を使って、楽しく遊びましょう。遊ぶときのお約束が5つあります。①一人で遊ばない。②体を動かしましょう。③同じ色の帽子をかぶっている子と遊びましょう。④コーンから出ないように、決まった場所で遊びましょう。⑤お友達とぶつかったり、転んだり、けがをしないように遊びましょう。笛が鳴ったらこの遊びはおしまいです。使っていた道具をカゴの中に戻しましょう」と説明があり、試験が始まると、各グループに先生が1人ずつ付き、チェックをしていた。

このような行動観察では、人気のある道具を独占したり、他の子と取り合ったりしないようにすることが大切です。
また、ポンポンのように一人で遊んでしまいがちな道具が含まれており、こうした道具を使ってどのように複数で遊ぶのか、工夫が必要になります。ちなみに、遊ぶスペースが決められていて遊ぶには困難があるように思われるフリスビーですが、入試を終えた子ども達に聞くと、お手玉を投げる的にしたという子や、お皿のようにして遊んだという子がいました。このように、その場で与えられた道具で工夫して遊べるようにするには、日ごろから「見立てて遊ぶ」という経験をさせておくとよいでしょう。
さらに、1人で遊んでいる子や順番待ちで遊んでいない子に、進んで声をかけることができることも大切です。



学習院初等科では、「魚釣りゲーム」が出されました。
【試験の概要】
一列に並んで、自分の番になったらマグネットが先についている釣り竿をカゴの中から取り、海に見立てたブルーシートから魚を釣る。
釣れたら竿をカゴに戻し、その先にある箱の中から目をつぶって魚のカードを引く。
引いた魚のカードと釣り上げた魚が同じならホワイトボードに釣った魚を貼り、違う魚のカードなら、カードを箱に戻して釣った魚を海に逃がす。
たくさん魚を貼ったチームが勝ち。

この試験では、楽しいゲームのなかに、様々な非認知能力を試す場が設けられています。
例えば、魚を釣り上げ、達成感や嬉しい気持ちがあるなかで、目をつぶって箱の中の魚カードを引かなければいけないという設定には、違うカードを引いてせっかく釣り上げた魚を戻したくないという気持ちがありつつも、約束通りに目をつぶってカードを引くことができるという、道徳心、自制心が求められています。まさに「ルールや指示を守って正直に行動できているか」です。

この3校の行動観察を見ただけでも、それぞれの学校の個性が出ていますし、問題の多様化を感じます。
余談ですが、教室のフロントでアオガエルやクワガタなどの生き物を飼っていると、授業の前後に子ども達が見に来るのですが、水槽を叩き、水槽の壁にくっついてじっとしているカエルを動かそうとする子がいます。「たたかないでね!カエルがビックリしてしまいます」と注意書きがあるにもかかわらず、我慢できずに叩いたり揺らしたりする子どもを注意する保護者はあまりいらっしゃいません。
苦手なペーパーをできるようにすることよりも、してはいけないことを我慢できるように躾けることのほうが、はるかに合格に近づくということを忘れないでいただきたいと思います。

続きを見る

03今年も数多く出題されたひらめき問題
<精華小学校、聖心女子学院初等科、慶應義塾横浜初等部>

ペーパーでは、今年も初めての問題が数多く出題されました。近年、このような出題傾向が増加しているのは、努力してペーパー力をつけることも大事だが、それ以上に、しっかりと話が聞けて、思考力、言い換えればひらめきが良い子をとりたいという学校の意向の現れです。

精華小学校では、「車がゴールまで進みます。1マス進むのに1つ砂時計を使います。車が2台くっついている時は、前の車は進めますが後ろの車は進めません。すべての車がゴールに行くには、いくつの砂時計がいりますか。その数だけ砂時計に○をつけましょう」という問題が出題されました。
一見簡単なように見えますが、果たしてどうでしょうか。

例えば、上から3問目は、2台の車がくっついているので、1つ目の砂時計では後ろの車は動くことができません。2つ目の砂時計からは間が空き2台とも1マスずつ動けるので、合わせて7回でゴールできるということになります。
一番下の問題は、前の2台がくっついているため、1つ目の砂時計で前と後ろは1マスずつ進めますが、真ん中の車は動けません。2つ目の砂時計では真ん中と後ろの車がくっつくので、後ろの車は動けません。その後は全ての車が動けるので7つ目ですべての車がゴールできます。
おわかりになりましたか?問題の意味さえわかれば何でもない問題かもしれませんが、なかなかの難問です。


聖心女子学院初等科では、「折り紙を2回折った時にどんな形ができますか?」というペーパーが出題されました。これまで、折って広げた時の折れ線を問う問題はありましたが、折った時の形と問うというのは新しいスタイルです。
答えは3つなのですが、3辺の長さが違う直角三角形も折り紙の4分の1のサイズなので、うっかり〇をつけてしまう可能性があります。


慶應義塾横浜初等部では、「左の絵が赤、青、黄色の順番に段々大きくなります。それぞれの四角の中から合っているものを一つ選んで〇をつけましょう」という問題が出されました。 この問題でおもしろいのは、選ぶ絵が、スマートフォンの写真をズームした絵であることです。

学校側もいろいろと考え工夫していますから、来年以降も、こうした傾向は続くでしょう。どんなに問題集をやっても出てこない初物に対して、持てる知識を駆使して正解を導き出せる子どもに育てることができるか。教室の力量と家庭学習のクオリティが問われています。

続きを見る

04「答えにくい本音を聞き出す質問」「ネガティブな質問」「親子で相談してから発表するスタイル」が散見された面接

面接では、今年も引き続き「本音を聞き出す質問」が見られました。
例えば「併願校はどちらですか?」は、答えにくい質問の一つですが、大事なのは相手に嘘をついていると思われないことと、学校がモヤモヤするような答え方をしないことです。
「併願校はありません」と答えれば単願、つまり第一希望ということにはなりますが、はたして学校がそれを信じてくれるでしょうか?ご両親のどちらかが卒業生、もしくは兄姉が在校生であったとしても、1校しか受けないご家庭は稀です。また、似たような学校を挙げて一貫性があることをアピールしようとしても、学校からすれば、合格したらうちに来てくれるのかモヤモヤするでしょう。

今年、東京女学館小学校で「さまざまな学校を見てこられたと思いますが、魅力に感じた他校の取り組みを具体的に教えてください」と問われました。本音を聞き出すためにはとても良い質問だと思います。

また、「どのようなお子様ですか?」も、簡単そうで実は難しい質問です。
「明るく活発で、何事においても好奇心旺盛な子どもです。」のような答え方をする保護者は多いものですが、学校側にしてみれば「特色のない平凡な子」と言われているようなものです。もう少し深堀りすると、子どもというものは、明るさの違いこそあれみんな明るいし、活発といえば聞こえはいいけれど、実態はじっととしていられないだけかもしれないし、「何事においても」好奇心旺盛なんてことが本当にあるのかも疑問です。
そもそも、浅く広く関心がある子より、狭く深く探求する子の方に、学校は魅力を感じるように思われます。答えを用意する際にも、そのあたりを考慮されてはいかがでしょう。
立教小学校・森村学園初等部・日本女子大学附属豊明小学校などで、「お子様とお父様の似ているところを教えてください」と聞かれました。父親との共通点という新しい視点を与えることで、明るい・活発・何事においても好奇心旺盛といった意味のない返答をさせずに、子どもの本当の姿を聞き出そうとしていることがよくわかります。
東京農業大学稲花小学校では「親になって5、6年目ですが、お互いに点数をつけあうとしたら何点ですか」と聞かれました。お互いに高い点数も低い点数もつけにくいために、65~80点をつけた方が多かったようです。
さて、ここで大事なことは、点数ではなく何が良くて75点なのか、25点分は何が足りないと感じているのかを伝えることです。聞かれたからとりあえず75点と言っているだけと学校側に思わせないことです。
例えば、「妻は子どもの誕生日だけではなく、日常的に全てのものを手作りしており、娘が『お母さんの手は魔法の手』というほど愛情と時間をかけているので100点満点と思う日と、欠点を指摘するよりも長所を伸ばし自信を持たせてほしいと思う日もあるので、これからのお互いの成長のためにも75点としておきます」といった答え方もあるはずです。
ネガティブな質問も、依然として多くの学校で問われました。
早稲田実業学校初等部では、「お子様が不登校になったらどうしますか?」、成城学園初等学校では、「お子様がお友達に怪我をさせてしまったらどうしますか?」。また、複数の学校で、「もしお子様が学校から帰ってきた時にいじめを感じさせるようなことを言ったらどうしますか?」といった質問がありました。依然として、学校が保護者に悩まされていることが推察されます。表面的な答え方ではうまく話したつもりでも、多くの保護者と面接をしている先生からみたら怪しく映っているかもしれません。

また、親子で相談してから答えるというスタイルも、最近増えています。
成城学園初等学校では、男子には「冬休みやりたいこと」を、女子には「夏休みに楽しかったこと」を、親子で話し合い、誰が発表するかも決めて、答える質問が出されました。
聖心女学院初等科では、「お母様はお子様の好きなところ、お子様はお父様の好きなところ、お父様はお母様の好きなところを相談して、それぞれが発表する」。
雙葉小学校では、「お父様は、子どもの頃の誕生日の思い出をお子様にお話ししてあげてください。お子様は、その話を聞いて、もっと聞きたいことがあるかをお母様と相談して、お父様に質問してください」。
これらの質問には、正解はありませんが不正解は存在します。4月に行われる「願書の書き方・保護者面接講座」(正会員対象)でしっかりと学んでください。

続きを見る

05コロナ前に戻った 慶應義塾横浜初等部

2021年度~2023年度の3年間は、コロナ禍で「絵画」が出題されてきましたが、今年度は、製作と行動観察が復活しました。
男子の高月齢では、「怪獣が出てみんな困っているので、その怪獣を倒せるようなベルトを作って下さい」いう発問で、ヒーローの変身ベルトを作るようなお題が出題され、製作中に先生方から「どんなベルトですか?」「どうやって怪獣を倒すの?」「そのベルトでは、どんなことができるの?」などと話しかけられての質疑応答が行われました。
その後、4人グループに分かれて、どのようなベルトを作ったのかを紹介し合い、恐竜の着ぐるみをかぶった先生をどのように倒すのかをグループで相談して、実際に先生を倒す真似をしました。あくまで“真似”なので、「先生を叩いたり、蹴ったり、触ってはいけません」と事前に注意があり、楽しくなりすぎて先生に触ってしまっては、ルール違反。楽しむこととふざけることの分別をつけることが大切です。
3年続けて「絵画」だったので、今年は絵画を中心に準備をしていた受験者が多かったようですが、来年度受験する方は、ペーパーに加え、製作と絵画の両方をバランスよく対策する時間を確保する必要があります。そのため、家庭学習でペーパーにどのくらい時間を使うのかを見極めることがより重要になるでしょう。今年度、1月と6・7月に実施される「慶應義塾横浜初等部ペーパー習熟度テスト」で男女月齢別の立ち位置を把握し、実りある家庭学習に繋げてください。

06最後に…

今年度の入試が終わってから、校長先生とお話しする機会がありました。普段は私の方から質問することが多いのですが、今年は校長先生から「以前はトップ合格からギリギリ合格、また不合格までそれなりの差があったのですが、今はトップから不合格までの差がなくなってきています。ジャックさんでは、進路相談をして、受けても不合格になりそうな子は受けさせないということはあるのですか?」と聞かれました。
ジャックでは、お子様の現在地をお話しし、合格する可能性を示唆しながら志望校の選択についてアドバイスをさせてもらってはいますが、あくまでも決定権は保護者にあるという考えのもと、最終的な決断は保護者にお任せしています。にもかかわらず学校がそのように考えるということは、本当に僅差だったのしょう。
実際、私が直接見ている生徒の中にも、横浜雙葉にご縁をいただけなかったお子さん達が、雙葉に、白百合に、東洋英和に、慶應義塾幼稚舎に、それぞれ合格しています。また、早稲田実業、暁星などに合格したお子様のなかにも、ジャック全体で七割近くのお子様が突破した慶應義塾横浜初等部の一次テストにご縁をいただけなかったお子様がいました。
昔と違い、学校別に準備して受験するのが当たり前になった今。合否はますます紙一重の勝負になっていくことが予想されます。