絵本紹介絵本紹介

おばけのがっこうへきてください(年中)

おばけのがっこうへきてください(年中)

作 さくら ともこ    
絵 いもと  ようこ 
岩崎書店

あらすじ: 運動がきらいな”つよしくん”は、ある日、オバケの学校に連れていかれ・・・

運動がきらいなつよしくん。かけっこも、ボール投げも下手なので、みんなに「よわしくん」と呼ばれています。
ある日のこと、いつものように木の下でポツンとしていると、突然現れたオバケの学校の校長先生に、スカウトされてしまいます。
連れて行かれたオバケの学校では、元気なオバケの子どもたちが、 飛んだり跳ねたり大騒ぎ。かけっこも、竹登りも、ボール投げも、み んなとても上手で、できないのはつよしくんだけです。なのに校長先生ときたら、「おばけに元気は必要ない。つよし大先生様が一等!」と、 つよしくんを褒めるのです。つよしくんは、だんだんと、妙な気持ちになっていきます。
一番苦手な跳び箱の前で霙えていると、オバケの子ども達の内緒話が聞こえてきました。
「人間の子どもって、運動が下手だねぇ」
「元気が、無いんだね」
(大変だ!僕がここで頑張らなくちゃ、人間の子どもは弱虫ばかりだって思われちゃう!)
涙がこぼれそうになりながらも、6 段の跳び箱に向かって走り出すつよしくん。思いがけず跳べたとき、つよしくんのなかで、何かが大きく変化したのでした。

評:自分で気づき、変化し、成長していく”つよしくん”の姿に、子ども達の共感を呼ぶことでしょう。

 主人公のつよしくんは、引っ込み思案で消極的な子。運動がきらいで跳び箱が怖い彼を、歯がゆく思う子もいれば、「自分と同じ」と親近感を覚える子もいるでしょう。
ところが、ユーモラスなオバケの登場でお話は一変。オバケの学校での不思議な体験に、子ども達はぐいぐい引き込まれていきます。元気でイキイキとしたオバケの子ども達から、大切な何かを学ぶつよしくん。自分で気づき、変化し、成長していくその姿は、子ども達の共感を呼び、大きな跳び箱の前でふるえているつよしくんに、がんばれ! と声援を送ることでしょう。
ところで、つよしくんは、人間の学校ではちっともやる気にならなかったのに、オバケの学校で「弱くて良い、出来なくて素晴らしい」褒められると、次第に積極的に取り組む気持ちが芽生え、ついには、 それまで挑戦すらしたことのない6段の跳び箱にも跳べるようになりました。実際に、引っ込み思案で消極的な子は、伸び伸び呼吸できる場に置かれるとホッと安心して自分を振り返り、そこで初めて新しい力が湧いてくるということがあるそうです。親は子に、「積極的になれ、強くなれ」と望むものですし、大きな飛躍を期待して、「まだできないの?」「こんなこともできないの!」などと厳しい声を掛けること もありますが、実はそんな言葉ではやる気を引き出すことはできません。
「かくれんぼするものこの指とまれ」。遠くから聞こえて来た先生の声に、「は一い、はい」と元気よく駈け出して行くつよしくん。読み終えた子どもの心にも、「自分もつよしくんみたいにやってみよう」 という気持ちが芽生えるかもしれませんね。