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くんちゃんのはじめてのがっこう(年長)

くんちゃんのはじめてのがっこう(年長)

ドロシー・マリノ 作まさき るりこ訳
ペンギン社

あらすじ: くまの“くんちゃん”は、今日から1 年生。学校へついた途端になんだか不安になり・・・

くまの“くんちゃん”は、今日から1 年生。とても早く起きた“くんちゃん”は、朝ご飯を食べると、お母さんと一緒に学校へ向かいます。途中で会った、みつばちや、こうもり、ビーバーにも、「ぼく、学校へ行くんだよ」と語りかけ、スキップしながら登校します。
ところが、学校へついた途端になんだか不安になり、お母さんに一緒に居て欲しいと思います。
1 時間目が始まりました。先生は上級生を指して、前に出てきて教科書を読むようにと言います。字が読めない“くんちゃん”は、なるべくイスの上で小さくなりました。続いて先生は、違う生徒を指して字を書かせました。字が書けない“くんちゃん”は、ますます小さくなりました。先生はまた違う生徒を指して、黒板に算数の計算をさせました。計算ができない“くんちゃん”は、さらに小さくなりました。
先生が、上級生に、前の方にイスを 3 つ並べさせました。そして、今日入学したばかりの“くんちゃん”と“スージー”と“ハリエット” に、そのイスに座るようにと言いました。とうとう“くんちゃん”は、ドアの外へと逃げ出しました。
ところが先生は、何も無かったかのように黒板に“ハリエット”と書き、「あなたの名前はハリエット。同じ“は”で始まる言葉を知っていますか?」と聞きました。窓の外で見ていた“くんちゃん”は、「僕も知っている」と思いました。安心した“くんちゃん”は教室に戻り、 みんなと一緒に勉強しました。その日の勉強は、自分の名前と同じ音で始まる物の絵を描くことでした。一生懸命描いた“くんちゃん”は、その絵を持って帰り、両親に誇らしげに見せるのでした。

評:新しい生活への期待と不安で揺れ動いているとき、是非この本を読んであげてください。

 新しい環境に放り込まれれば、誰だって多かれ少なかれ、戸惑いや不安を感じるもの。行くまでは、期待と嬉しさでいっぱいだったのに、 いざとなると心細くなる“くんちゃん”も、上級生の勉強を見ていて、自分にはできないという劣等感を抱きそうになる“くんちゃん”も、1年生にありがちな姿です。“くんちゃん”のように逃げ出さないまでも、逃げ出したい気持ちを持った覚えのある子は珍しくないはずです。
この本では、先生の配慮によって、“くんちゃん”は自信を取り戻し、学校が好きになります。本当に良かったと思います。そう、学校は楽しいところなのです。
就学を直前に控えた春休み、お子さんの心は、新しい生活への期待と不安で揺れ動きます。「1年生になるんだ」という晴れやかな気持ちの裏側で、「学校ってどんなところだろう?」「友だちはできるだろうか?」といった不安も、やっぱりあるのです。そんなとき、ぜひこの本を読んであげてください。きっと学校が楽しみになるはずです。