絵本紹介絵本紹介

すいかのたね(年少)

すいかのたね(年少)

作 さとうわきこ
福音館書店

あらすじ: “ばばばあちゃん”は庭に“すいかの種”を蒔きました。すると…

お日様が光って嬉しくなっちゃう日、“ばばばあちゃん”は庭に“すいかの種”を蒔きました。それを木の上から見ていた子ネコは、「大事そうに何か地面に隠したな」と思い、“ばばばあちゃん”がいなくなってから掘り返してみます。でも、出てきたのは黒い小さな“すいかの種”だけ。「なあんだ、つまらない」とがっかりし、元のように埋めました。
と、今度はその子ネコの様子を遠くから子犬が見ていました。「何か良い物を埋めたな」と勘違いし、子ネコがいなくなるのを待って、さっそく掘り返してみます。ところが出てきたのは黒い小さな“すいかの種”。「ちぇっ、つまらん」とがっかりし、元のように埋めました。 その姿を見ていたウサギが、ウサギを見ていたキツネが、同じように掘り返し、がっかりしては埋め直します。さらには、キツネの様子を見ていた“ばばばあちゃん”までが、自分が種を埋めたことも忘れて掘り返し、やっぱりがっかりするのです。
こんなことをされた“すいかの種”はたまりません。とうとう怒って、「芽を出すのはやめだ、やめだ」と怒鳴ります。めげない“ばばばあちゃん”は、「いいかげんに芽を出して、早く大きくおなり!!」と怒嗚り返します。と、憤慨した“すいかの種”は、プスンとはじけて芽を出し、ものすごい勢いで成長して、そこらじゅうに見事なすいかを実らせました。
すいかを食べようと“ばばばあちゃん”が包丁を入れると、「これでもくだらん種かい、え!」という怒嗚り声が聞こえてきました。

評:他のシリーズも読みたくなるほど、ユーモア溢れる絵本です

さとうわきこさんらしい、ユーモア溢れる絵本。“すいかの種”を埋めている姿を見ては、「何かいいものを埋めた」と勘違いし、掘り返してはがっかりするという繰り返しが楽しい前半に対し、「つまらない」と言われた“すいかの種”が反撃をする後半は、胸がスカッと する展開です。実ったすいかを割ったところ、「これでもくだらん種かい!」と怒鳴り声が聞こえたという落ちも爽快で、私は、思わず吹き出してしまいました。
また、主人公の“ばばばあちゃん”はもとより、ネコ、犬、ウサギ、キツネ、そして“すいかの種”までもが、表情豊かに描かれていて、 とてもかわいらしいのも大きな魅力。パステル調の淡い色彩が、明るい画面を作り出し、お話の楽しさをバックアップしています。“ばばばあちゃんのおはなし”はシリーズ化しているので、気に入ったら他の本も試してみてはいかがですか?

【参考:ばばばあちゃんのおはなしシリーズ】
『いそがしいよる』 『あひるのたまご』 『たいへんなひるね』
『そりあそび』 『やまのぼり』 『どろんこおそうじ』
『アイスパーティー』 『あめふり』など