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スイミー(年中)

スイミー(年中)

作 レオ・レオニ
訳 谷川俊太郎
好学社

あらすじ:たった一匹になってしまったスイミーは… 

広い海のどこかで、楽しく暮らしていた小さな真っ赤な魚の兄弟達。その中でたった一匹だけまっ黒なスイミーは、どの兄弟よりも早く泳ぐことができました。
ある日、恐ろしいマグロがやってきて、小さな魚の兄弟を残らず飲み込んでしまいます。逃げ延びたのは、スイミーだけ。たった一匹になってしまったスイミーは、寂しさや悲しさと戦いながら、暗く広い海を冒険します。そして、すばらしい物と出会い、だんだんと元気を取り戻していくのです。
さらに、スイミーは見つけます。自分の兄弟とそっくりな小さな魚の兄弟達を。大きな魚を恐れ、岩陰にじっと隠れている彼らに、スイミーは言います。「いつまでもそこにじっとしているわけにはいかないよ。なんとか考えなくちゃ」。
言葉通り、スイミーは考えます。考えて、考えて、考えて、小さな魚でも、自由に広い海を泳ぎまわることができる、安全な方法を思いつくのでした。

評:とても悲しい経験をしながらも、前向きに、力強く生きていくスイミー

楽しく平和に暮らしていたのに、ある日大きな魚がやってきて、一瞬にして兄弟をみんな飲み込まれてしまったスイミー。とても悲しい経験をしながらも、前向きに、力強く生きていくスイミーは、人間の理想の姿と言えるでしょう。
淡い色彩を採用しつつも、力強いタッチで描かれる水中の世界。美しい一編の詩を思わせる文章表現。単なるお伽噺と言うにはあまりに崇高な世界観が、読む者のイマジネーションを掻き立て、子どもから大人までが心を打たれる展開を創り出しています。
一匹ずつは無力でも、みんなで力を合わせれば、大きな魚を追い出して自由に泳ぎまわれるのだというラストシーンから、本当の勇気の意味を感じ取り、力づけられる人も多いのではないでしょうか。
ぜひ、親子で一緒に楽しんでください。
【参考:レオ・レオニの本】
『フレデリック』 『マシューのゆめ」 『ひとあし ひとあし』
『せかい いち おおきなうち」 『アレクサンダとぜんまいねみ』
『さかなは さかな』 『ペツエツティーノ』 『あいうえおの き』
『うさぎたちの にわ』 『ここにいたい あっちへいきたい!』
『みどりの しっぼの ねずみ』 『おんがくねずみジェラルデイン』
『うさぎを つくろう』 『ぼくのだわたしのよ』
『コーネリアス』