絵本紹介絵本紹介

はじめてのおるすばん (年中)

はじめてのおるすばん (年中)

文 しみず みちを
絵 山本 まつ子
岩崎書店

あらすじ: 平気!と思っていたのに、とても怖くなってしまったお留守番…

3歳の“みほちゃん”は、初めて一人でお留守番をすることになりました。ところが、ママが外に出て鍵をかけたとたん、部屋の中が急にシーンとし、なんだか心細くなってきました。
「ママ、早く帰ってきて」と思っていると、玄関のチャイムが鳴りました。ドアを叩く音もします。怖くなった“みほちゃん”は、そっと玄関へ行ってみました。すると、「小包で一す。小包ですよ」という声が聞こえてきました。“みほちゃん”はやっとのことで「こづつみいりましぇん」と答えます。しかたがないので郵便屋さんは、「かあちゃんに渡してね」と言いながらポストに紙切れを入れると、帰って行きました。ところが、“みほちゃん”はその紙きれを捨ててしまいます。怖い物だと思ったのです。
少しすると、また玄関のチャイムが嗚りました。「いりましぇん!!」おもいきり大きな声で言ったのに、「さくら新聞です」という声が聞 こえたかと思ったら、突然、ポストのふたが持ちあがり、大きな目玉がふたつ覗き込みました。咄嵯に、「あっ、おばけ…」と“みほちゃん” は思いました。外で、そのおばけがしゃべっているのが聞こえます。怖くなった“みほちゃん”は、ぶるぶると震え出しました。諦めた新聞屋さんが帰っていく足音が聞こえます。
「今度誰かが来たらどうしよう…」“みほちゃん”の目から涙が溢れそうになったそのときです、玄関のチャイムが3回鳴りました。ママが帰ってきたのです。おみやげは、“みほちゃん”の大好きなプリンでした。

評:やわらかなタッチで幼児の空想豊かな心情が描かれます

お留守番を頼まれたときには元気に引きうけたものの、母親が鍵をかける音を聞いたとたんに一人ぼっちが意識され、急に心細くなる主人公の“みほちゃん”。見慣れているはずの玄関の熊が口を開けたように見えたり、柱時計の音が、「ひとり、ひとり」と聞こえたりという描写に、一人残された幼い子どもの心細さが現れています。
ママと一緒なら全然平気な郵便屋さんや新聞屋さんも、一人のときには怖い人達。「ピンポーン」と、玄関のチャイムが響くたび、体を硬くする“みほちゃん”の気持ちも、手に取るようにわかります。
いかにも幼児らしい“みほちゃん”の表情は、そのときどきの微妙な心の動きをよくとらえていて、子ども達の共感を呼ぶことでしょう。