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ことりとねこのものがたり(年中)

ことりとねこのものがたり(年中)

文 なかえ よしを 文   
絵 上野 紀子 絵

あらすじ: 仲間外れにされている小さな黒いのらネコがいました・・・

ネコのくせに高いところが怖くて登れないため、ネコ仲間からバカにされ、仲間外れにされている小さな黒いのらネコ。“ことりさん”だけは、そのネコのことを“ねこくん”と呼び、とても仲良くしてくれました。“ねこくん”は、人間に飼われている“ことりさん”のところへ行き、外の世界のことを話してあげるのが日課でした。
ある日のこと、“ねこくん”が、「僕はネコのくせに、高いところが怖いんだ」と話すと、“ことりさん”は、「私は一度でいいから、空を飛んでみたい」と言いました。そこで、“ねこくん”は、“ことりさん”をカゴから出してやりました。生まれて初めて空を飛んだ“ことりさん”は、楽しくて楽しくてしかたがありませんでした。
ところがしばらくすると、“ことりさん”は鳥カゴに戻ってきました。
「帰ってこなくてもいいのに」と言う“ねこくん”に、“ことりさん”は、「わたしがいなくなったら、“ねこくん”が怒られるわ」と言いました。 “ことりさん”はとても疲れているようでした。
次の日、“ねこくん”が“ことりさん”のところへ行くと、“ことりさん”は、床に倒れて死んでいました。“ねこくん”は、自分がカゴから出したせいだと思います。悲しくて、悲しくて、“ことりさん”の羽根をくわえると、泣きながら一目散に走り出しました。街で一番大きな木の下まで来ると、今度は勢い良く登り、とうとうてっぺんまで行きました。「“ことりさん”、ここが一番空に近いんだよ」。そう言うと、くわえていた羽根を離しました。夕焼けの明かりが羽根に当たり、キラキラと星のように輝きました。“ねこくん”は、いつまでも木の上で、キラキラと光る“ことりさん”とお話をしていました。

評:互いを思いやることのすばらしさを学ぶことでしょう。

高いところが苦手なためにネコ仲間からバカにされている、心優しい‘’ねこくん”と、一度も自由に空を飛んだことのない、かしこい“ことりさん”との友情の物語。仲間がいない“ねこくん”にとって、唯ーの心の支えは、カゴの鳥の“ことりさん”。その“ことりさん”の願いを叶えるために、飼い主にばれたらひどいめに遭わされるのを覚悟の上で逃がしてやる“ねこくん”と、“ねこくん”を思いやって帰ってくる“ことりさん”、お互いを思いやる美しい心の交流です。子ども達は二人の思いに共感し、互いを思いやることのすばらしさを学ぶことでしょう。
また、“ことりさん”の死を自分のせいだと思い込み、「もう一度空を飛びたい」という“ことりさん”の願いを叶えようとするあまり、恐怖心を忘れて街一番の大きな木の天辺へと勇敢に登っていく“ねこくん”の必死さ、けなげさは、幼い心にも感動を呼びます。“ねこくん”の気持ちを思い、優しい気持ちが広がっていくことでしょう。
作中、「ぼくはね、ネコのくせに高いところに登るのが怖いんだ。勇気が無いんだね」という“ねこくん”の言葉が出てきます。けれど、 “ねこくん”は、本当に勇気が無いのでしょうか?そもそも勇気って 何なのでしょうか?ぜひこの機会に、お子さんと勇気について話して みていただきたいと思います。