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ガンピーさんのふなあそび(年少)

ガンピーさんのふなあそび(年少)

作 ジョン・バーニンガム
訳 みつよしなつや
ぼるぷ出版

あらすじ: ”ガンピー”さんが小船で川下りをしていたら、子供やたくさんの動物たちが乗ってきて…

川のそばに住んでいる“ガンピーさん”は、舟を一艘持っています。ある日、“ガンピーさん”が舟に乗って出かけると、「一緒に連れて行って」と子どもや動物が次々とやってきました。“ガンピーさん”は、子ども達には『けんかをしないこと』、ウサギには『飛んだり跳ねたりしないこと』、ネコには『ウサギを追い回さないこと』、犬には『ネコをいじめないこと』、ブタには『うろちょろしないこと』、羊には『メエメエ鳴かないこと』、ニワトリには『羽根をパタパタしないこと』、 子牛には『歩き回らないこと』、ヤギには『蹴らないこと』を約束させ、一人残らず乗せてやります。
しばらくは、楽しそうに川を下って行きました。けれど、そのうち、全貝が約束を破ったものだから、さあ大変!舟はひっくり返り、みんな川の中へ落っこちてしまいます。
なんとか岸まで泳ぎ着き、体を乾かしたみんなは、“ガンピーさん”の家でお茶をご馳走になり、楽しいひとときを過ごしました。

評:約束を守らないと、大変なことになる。だから、約束はちゃんと守らなくちゃいけない。

最初の約束を守ってさえいれば、みんなで楽しく過ごせたものを、守らなかったばっかりに、舟はひっくり返ってしまい、川に落ちてずぶぬれになってしまう。この展開には、「約束を守らないと、大変なことになる。だから、約束はちゃんと守らなくちゃいけない」という教訓が含まれています。子ども達は、ちゃんとそれに気づきます。「だから、けんかしちゃいけないんだよねぇ」などと言ったりします。
ところが、みんなが約束を守らなかったために舟がひっくり返っても、“ガンピーさん”は怒りません。誰かを責めることもしません。 それどころか、みんなを自宅に招き、お茶をご馳走してあげ、別れ際には、「またいつか乗りにおいでよ」と、優しい言葉で送り出すのです。
この本の最もすばらしいところは、押しつけが一切無いことだと思います。だからこそ、子どもは素直に「約束を守らないといけない」と思うし、守らないとどうなるかということを心に焼き付けるのです。
細部まで丁寧に描き込まれた線画は、躍動感に溢れています。彩色とモノクロのページが交互に組まれていることで、イメージがさらに膨らみます。ゆったりとした時間が流れる絵本です。
【参考:続編】『ガンピーさんのドライブ』