絵本紹介絵本紹介

きいろいばけつ (年長)

きいろいばけつ (年長)

文 もりやま みやこ              
絵 つちだ よしはる 
あかね書房

あらすじ: キツネの子が黄色いバケツを見つけました

月曜日、丸木橋のたもとで、黄色いバケツを見つけたキツネの子は、ウサギの子とクマの子と3人で話し合い、次の月曜日までそのままだったら、そのバケツをキツネの子の物にしようと決めます。それから毎日、キツネの子は黄色いバケツの元に通い、ほとんどの時間をバケツの側で過ごします。自分の物になった日を想像したり、ときには実際に持ってみたりするのは、とても楽しいことでした。
ところが、待ちに待った月曜日、キツネの子が行ってみると、バケツは無くなっていました。口々に残念がるウサギの子とクマの子に、 キツネの子は「いいんだよ」と言うと、にこっと笑ってみせました。

評: 黄色いバケツを大切に思うキツネの子の気持ちが優しく温かく描かれています。

見つけてからの1週間、キツネの子が黄色いバケツと過ごした時間は、短くても密度の濃い時間でした。その思い出があるからこそ、キツネの子は、「いいんだよ」と言い切ることができたのでしょう。
ときに子どもは、些細なことにこだわったり、夢中になったりします。作者の森山京さんは、「かけがえのないものは一つしかないということを一番よくわかっているのは、本当は幼い子どもであるのかもしれません」とおっしゃっています。同感です。そして、そんな幼い子どもの気持ちがよく表現されているのが、この絵本だと思います。