ジャック合格特集2016

理事による入試総括

自己改革に乗り出す私立小学校が増加
挑戦のチャンスも増える傾向に

  • ジャック幼児教育研究所
    理事:大岡史直

01 今年の受験者数に変化はありましたか?

受験者数に大きな変化はないものの、各私立小学校は、求める入学者の維持や受験者数を増やすために、数々の自己改革を行っています。それが学校としての生き残りに繋がる例もあります。例えば、玉川学園はバイリンガルプログラムを採用して出願数が約2倍になりました。

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玉川学園は、一般クラスとバイリンガル・エレメンタリースクール(通称 BLES)を来年の4月から併用します。BLESは国語と社会以外は全て英語教育で行います。授業時間も8時半から16時までと長く、延長プログラムで18時まで、お迎えに行けば19時まで預かってくれます。インターナショナルスクールに通っているお子様を中心に、受験者数を伸ばしました。

PART2 埼玉地区での出願数が増加

都内よりも先に入試が行われる埼玉地区も多くの学校で出願数が増えました。

その理由としては、
①合格してすぐに手続きをしなくても合格の権利をキープできる「延納システム」が浸透してきたため、(学校やキープする期間によっても金額は異なりますが)3〜5万円で都内の結果が出てから進路を考えることが出来るようになったこと。

②さとえ学園・星野学園・西武文理など、昨年の都内の問題を意識して入試問題を出す学校が増えてきているので、暁星・雙葉といった都内の学校を受ける前に、緊張感を持って受けることができる埼玉校を受けておく動きが出てきたこと。
が挙げられます。これらの動きはこれからも活発化すると思います。

PART3 神奈川地区では2次募集をする学校も

神奈川地区では多くの学校は10月第3週の火曜日に統一して行われているために、複数の学校を受けづらくなっています。そのため横浜雙葉、精華、洗足学園、湘南白百合などを除く学校は2次募集をしています。しかし、来年から湘南白百合も2次募集が実施することが決まりました。学校側としては、2次募集をすれば優秀な生徒が採れるということはわかっていても、第1志望ではないお子様が入学してくることに少なからず抵抗があったために、実施に踏み切れなかったのでしょう。しかし、それ以上のメリットがあると判断したのだと思います。

2次募集を行うことによって、これまで湘南白百合の学校説明会に行かなかった保護者も説明会に参加するようになります。

それによって学校の建学の精神が広がり、志望校を今一度検討することにつながれば、新たな受験者を獲得するでしょう。今後、都内でもこの動きは広がっていくと思われます。

02 小学校受験の最近の動向について教えてください

PART1 行動観察の重要度が増している

行動観察の重要度が増しています。普段ペーパーテストではかなりの高得点をとっているお子様でも、ご縁を頂けなかった生徒もいます。これは推測に過ぎませんが行動観察でチェックをされている可能性があります。

PART2 洗足学園 / PART3 横浜雙葉 / PART4 聖心女子学院

洗足学園では1グループ6人に分かれ、①水色のA4の用紙を手で四つにちぎり切る。②それを丸めてセロテープでとめて丸い筒を作り動物の足のように立てる。③その上にB5の白い用紙を乗せる。④それを続けながら高くしたチームが優勝。約15分の間に6段まで積んだチームもありました。縦長に丸めるのか、太めに丸めるのかによって長さが違ってくるので、チーム内での相談も必要になります。

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PART3 横浜雙葉

横浜雙葉では、手作り神経衰弱を4〜6人に分かれて行いました。カードを裏返しにする前に、たくさんのカードの中から仲間分けをします。オタマジャクシとカエル、牛と牛乳、鬼とお化け、蝶と青虫、雨と傘、鉛筆と消しゴムなど、みんなで相談して、カードで2枚ずつの仲間を作ってから裏返しにします。トランプとは違って、どれとどれが仲間なのかをみんなで決めてから神経衰弱をするのです。2回目は原則、カードの組み合わせを変えて行います。オタマジャクシと青虫、牛とカエル、牛乳とお化け、傘と鉛筆などを話し合って行います。自分の意見と違う考え方を受け入れながら参加することが必要です。

PART4 聖心女子学院

聖心女子学院では6人前後で輪になって、グループを作ります。

①鉢巻をお腹で1回結び、②1回手を叩いて、その場でぐるっと回り、③ほどいて「どうぞ」と隣のお友達に渡す。④もらったお友達は「ありがとう」と言って、同じことを繰り返します。⑤全員が1周まわって終わったグループはその場に座る。

今度は鉢巻を2本にして同時に2人の子どもで行います。年長児がする内容と考えれば、決して難しいものではありませんが、2本同時に行うと、1本とは違い白熱します。それにより、「早くして」「また負けちゃう」「手を叩くのを忘れてるよ」など行動観察のテストをしていることを忘れて、普段の姿が出てしまいます。

行動観察は10人の中から2〜3人選ぶ「取るための行動観察」と、2〜3人をはじく「落とすための行動観察」があります。このような行動観察はまさに「落とすための行動観察」です。

03 今年の面接問題について教えてください

PART1 暗記では対応できない面接が増えている

最近の面接は保護者に質問して、その内容を子どもに聞いてくるような学校が増えています。その逆のパターンもあります。それによって事前に全て準備して臨むことが、子どもも保護者も難しくなっています。

PART2 聖心女子学院 / PART3 暁星

聖心では母と子がその場で話すことはありましたが、今年は父と子で話しました。日によって質問の内容は異なりますが、

一番好きなお友達に何をプレゼントするのか、お父様と相談して。その後どうしてそれにしたの?

ほかにも、
家族の宝物は何ですか?
小学校に入って頑張ることは何? 
今度のお休みの日にどこに行きたいの? 

といった質問が出ています。

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そして、最後に必ず「それはどうして?」と聞いてきます。

父と子のやりとりを見ているので学校側はどうしてその答えになったのか分かっています。それでも子どもに改めて「どうして?」と聞きます。理由をきちんと話すことが出来るか見たいのです。

PART3 暁星

暁星では父と子の対抗戦でした。1〜5の数のカードを合図に合わせて出し、数の多い方が勝ちです。母親は子どもの味方になるように指示されます。五回戦が終わった後に勝敗が伝えられます。

ゲームの後、父親に「何かお子様に言いたいことはありますか」と聞かれます。実際に面接を受けた方から聞くと、ゲームの進め方や勝敗などゲームに関連した話なのか、ゲームとは関係のないことで話すべきなのか迷った方もいらしたそうです。どちらにしても、志願理由やどのようなお子様ですかなど、「準備すればのり切れる面接」から進化しています。

普段から子どもとの会話を大切にして、さらに一本筋の通った教育方針の基に子育てをしていれば何を聞かれてものり切れるはずです。

PART4 早稲田 / PART5 慶應横浜初等部

早稲田は「問題解決能力」を試す問題が出題されました。

一日目の午前 女の子
「ゆうちゃんがハワイで迷子になり、島に一人とり残されてしまいました。反対側の島にはお母さんやお姉さんがいます。どうやって反対の島に渡ったらよいと思いますか?その絵を描きましょう。」という問題が出され、描き終わった後で「どうやって渡りますか」「どうしてそう思ったのですか」と質問されます。

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二日目の午前 女の子
「ゆうこちゃんは公園に行くと、女の子が手の指を怪我してバンソコウを貼ってもらいました。ゆうこちゃんはこれからその子と遊びます。何をして遊ぶのか描いてください。」という問題です。

滑り台で遊んでいる絵を描いた子には「これは何ですか。いつもこれで遊ぶの?」

シーソーで遊んでいる絵を描いた子には「手を怪我しているけど、どうやって支えるの?」と質問されたそうです。

二日目の午後 男の子
「お母さんが風邪を引いています。お母さんの風邪を治すためには何を買ってきたらいいと思いますか。その絵を描きましょう。」という問題です。「何を描きましたか」「どうしてこれを買いましたか」と聞かれます。

四日目の午前 男の子
「ゆうくんはキャンプに行きました。お父さんとお母さんがいない間に、たき火の火がどんどん大きくなってしまいました。あなたならどうしますか。」という問題で、「何をしているところですか」と尋ねられます。

また、生活習慣でも机の上には雑巾・水の張った洗面器・ゴミ箱・ティッシュ箱・ペーパータオル箱があり、机の中央が白い液体で3か所汚れている。「牛乳をこぼしてしまいました。きれいに片付けてください。使った道具は元に戻してください」という問題が出題されました。

生活習慣においても「指示どおりにする」ことから「解決する力」を見るようになってきました。

<ジャックの「聞き取り話し方」>
ジャックでは「聞き取り話し方」の授業で問題解決能力を引き出しています。

・ポストに手紙を入れることができない子がいます。あなたならどうしますか?

・電車に乗り遅れたらあなたならどうしますか?

・お使いに行ったときにお金が足りなくなったらどうしますか?

・幼稚園にお弁当を持っていくのを忘れたらどうしますか?

このような授業で、何らかの方法で自分の言葉で問題の解決方法を話せる子は、今回の入試においても何かしらの絵を描いて説明をしたでしょう。

ご家庭でも普段から子どもに考えさせることをしてほしいと思います。

例えば、みかんが10個あります。3人で喧嘩にならないように分けるためにはどうしたらよいか?

・3個ずつ分けて残りの1個をジャンケンする
・3個ずつ分けて残りの1個を3等分にする

お兄さん、お姉さんがいれば、

・10個の中から小さめのみかんを4個選んで4-3-3に分けてからジャンケンで選ぶ
・ジュースにして3等分にして飲む

といったユニークな答えも出てくるかもしれません。

PART5 慶應横浜初等部

女子は「発砲スチロールの立方体(5個前後が組み合わさった立体)があります。手に取ってクルクル回して見たときに、このように見えない絵を見つけて印をつけましょう。」という問題でした。

男子には、トイレットペーパーの芯のような円柱に線が引いてあるものが渡され、「赤い線に切込みをいれて広げた時の絵に○をつけましょう。」という問題でした。このような具体物を使った問題は慶應横浜初等部の特徴になるかもしれません。

常識問題が出るのも横浜初等部の特徴の一つですが、「雷・風鈴・鈴虫・牛・除夜の鐘などの音を聴いて、音と合っている絵に印をつける。」という問題が出題されています。

これら具体物を使った問題はさらに増えてくることが予想されます。

今回の音の問題も、雷・牛・ゾウ・のこぎりなどの音を聴いて絵を描くという課題が、ジャックの応用自在のカリキュラムの中にあります。子どもたちは、動物の鳴き声が自分のイメージしている鳴き声と違っていたり、日常生活の中で聞こえてくる音を聞き流してしまったりしているので、苦戦していました。ますます、具体物を使ったこの授業は重要になるでしょう。

04 今年の結果はいかがでしたか?

受験者数を増やすことに力をいれている学校と補欠ができるだけ繰り上がらないことに注力する学校に分かれてきています。この二つのことを両立することは難しいです。

なぜなら、受験者数を増やすために受けやすい日程で組めば、その分、第一希望ではなく、併願校として受験する方が増えるために繰り上がりが増えてしまいます。また、入試日を他校と同じ日に集中させたり、入試日を二日間にまたがって設定したりすれば、併願がしにくくなるので、辞退者は減りますが、その分、受験者も減ってしまう。

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私の個人的な意見ですが、子どもを少しでも良い環境に入れたいと思って併願をするご家庭が増えてくるのは自然なことだと思います。仮に入学時には第一希望の学校でなくても、「僕は良い学校を卒業した」「私の母校はここ」と胸を張って卒業することが、大切であり幸せなことです。入学時の希望の順位はどうあれ、通いながら気持ちは変化していくものです。

その意味では私立小学校にも、多くのお子様が挑戦するチャンスを増やす方向になればと願っています。

もちろん、歴史と伝統のある私立小学校を自己改革することは大変なことかもしれません。

しかし、私立小学校が改革を行うことは学校に新たな風を呼び込むチャンスでもあります。また、各ご家庭にとっても、その学校が新たに打出してくる入試にチャレンジすることは、この時代を生き抜く力をつけていくチャンスでもあります。

英語で「CHANGE」と「CHANCE」はGとCの違いしかない。Gの中のTをとるとCになります。このTはトラブルの頭文字なのかもしれません。目標達成に伴う難題であるトラブルを乗り越えた先に、より良くするためのチャンスがあるのではないでしょうか。