映像インタビュー 小学校受験が中学校受験に似てきた

ジャック幼児教育研究所
理事:大岡史直

01今年の受験者数に変化はありましたか?

今年の受験者数ですが、2日間の試験から1日に日程を変更した田園調布雙葉は3.4から4.1に倍率が上がりました。このように、日程を変えて受験者が増えた学校がありますが、全体的にはわずかながら減りました。
ただ受験者数よりも実質倍率が重要です。
青山学院・東洋英和などのプロテスタント校は日曜日に入試日程を組みません。今年は11月2日が日曜日だったので青山学院ならば通常1日と2日であろうところを1日と3日でした。

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今年の受験者数ですが、2日間の試験から1日に日程を変更した田園調布雙葉は3.4から4.1に倍率が上がりました。このように、日程を変えて受験者が増えた学校がありますが、全体的にはわずかながら減りました。
ただ受験者数よりも実質倍率が重要です。
青山学院・東洋英和などのプロテスタント校は日曜日に入試日程を組みません。今年は11月2日が日曜日だったので青山学院ならば通常1日と2日であろうところを1日と3日でした。

早稲田は例年、男子から入試が始まりますが、今年は女子からでした。
それにより、早稲田は立教・暁星と重なったので、早稲田の男子の倍率は7.1から6.2に下がりました。
このように入試日程やその子の月齢によっては聖心・早稲田・学習院の3校が受けられたり、1校しか受けられなかったりと大きな違いがでます。
来年は11月1日が日曜日になるので入試日程に影響がでるでしょう。
併願できると思ったところができなかったり、できないと思ったところができたりするので、説明会や見学会など受験する可能性がある学校は全て参加しておくことをお勧めします。

2015年度 実質倍率 *ジャック調べ
慶應義塾幼稚舎〈男子〉8.5 〈女子〉10.9 慶應義塾横浜初等部 9.9 早稲田実業学校〈男子〉6.2 〈女子〉8.6
青山学院〈男子〉2.6 〈女子〉3.2 学習院〈男子〉5.5 〈女子〉6.2 成蹊〈男子〉4.6 〈女子〉3.9
暁星6.0 立教3.3 桐朋6.5 雙葉4.4 東洋英和女学院 7.0 聖心女子学院 2.9 白百合学園3.0 田園調布雙葉2.9 横浜雙葉3.8

02小学校受験の最近の動向について教えてください

PART1 兄弟有利とは一概に言えない

小学校受験では上の子が通っていると、同じ学校を受ける場合、下の子は多少有利とされています。しかし年々感じることですが、学校側は兄弟だからできるだけ入学させようという考え方が薄らいでいるように思います。
同時に上の子が違う私学に通っていても、基準さえ満たしていれば普通に合格しています。

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小学校受験では上の子が通っていると、同じ学校を受ける場合、下の子は多少有利とされています。しかし年々感じることですが、学校側は兄弟だからできるだけ入学させようという考え方が薄らいでいるように思います。
同時に上の子が違う私学に通っていても、基準さえ満たしていれば普通に合格しています。

中学受験で言えば上の子が在校生だから有利などということはありえません。幼稚園受験で考えると、親が送り迎えをするのだから年子や二つ違いの兄弟が別々の幼稚園に通うことには無理があります。そこで兄弟揃って同じところに通うケースが増えるのです。
しかし、小学校は本人が通うのだから、兄弟だからといって下駄をはかせる必要はなく、ますます本人の実力主義になっていくことでしょう。

PART2 体裁よりも実を取る

神奈川の多くの私立小学校は、例年10月3週目の火曜日、同じ日に入試が行われます。しかし、今年は事前に複数の日程で入試を行うことを公表し、他校にご縁がなかったお子様が2回目、3回目のテストで受験できるよう日程をくみ、能力があったにも関わらず発揮することができなかったお子様を上手に選抜している学校が増えました。

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神奈川の多くの私立小学校は、例年10月3週目の火曜日、同じ日に入試が行われます。
しかし、今年は事前に複数の日程で入試を行うことを公表し、他校にご縁がなかったお子様が2回目、3回目のテストで受験できるよう日程をくみ、能力があったにも関わらず発揮することができなかったお子様を上手に選抜している学校が増えました。

今後は、第1希望のご家庭のお子様を取りたいと思っている学校と、第2・3希望であっても能力のあるお子様を入学させるために2次募集を積極的に取り入れていこうとする学校とに分かれていくことが予想されます。

PART3 定員以上の合格者を発表

中学受験では他校に流れるのは当たり前なので、定員よりも2倍・3倍の合格者を出すところまであります。辞退者が出た時に補欠を単純に繰り上げればよいだけの話なのですが、繰り上げようと連絡すると別の学校にすでに手続きをしていると、志望順位が上でも断られてしまうケースがあります。

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中学受験では他校に流れるのは当たり前なので、定員よりも2倍・3倍の合格者を出すところまであります。辞退者が出た時に補欠を単純に繰り上げればよいだけの話なのですが、繰り上げようと連絡すると別の学校にすでに手続きをしていると、志望順位が上でも断られてしまうケースがあります。

そこで、一部の学校ではあらかじめ最低でもこれぐらいは抜けるであろうと思われている数を算出し、募集人数よりも多めに合格者を出しています。これによって補欠の動きが昨年よりも鈍くなっており、来年以降もこの傾向は続くと思われます。

03今年の入試問題について教えてください

PART1 ペーパー

特筆すべきは、慶應横浜初等部の一次のペーパーテストが3年目で大きく変わりました。2年連続して話の記憶・欠所補完・積み木の数や空間知覚でしたが、今年度は点対称や線対称のマジックボックスや系列・指示の聞き取り等でした。

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特筆すべきは、慶應横浜初等部の一次のペーパーテストが3年目で大きく変わりました。2年連続して話の記憶・欠所補完・積み木の数や空間知覚でしたが、今年度は点対称や線対称のマジックボックスや系列・指示の聞き取り等でした。

なぜ内容を変えたのかは推測にすぎませんが、難易度を変えずに同じ内容の試験をしても差が出ないので、ちょっとしたケアレスミスの差で一次テストの合否が決まることがないように傾向を変え難易度を上げた。又は、初年度、学校側から「教室で準備している子が特別有利にならないように出来るだけの配慮をする」といって始まりましたが、やさしい問題だと授業についていくことが難しい子でも合格してしまうことがあるのでレベルアップしたことが考えられます。
どちらにしても来年度、初等部を受験するご家庭の学習は、絵画製作に偏らずにバランスよく学習することが求められます。
また、各学校で生活に密着した問題も出題されています。暁星小学校では「種が一つしかない果物は?」、横浜雙葉小学校では「『シンデレラ』と『おむすびころりん』の両方に出てくる動物に○をつけましょう」といった問題です。
そのためには対策として、数多くの問題集をこなしながら、身近なところからクイズのように親子で会話を増やしていくことです。

PART2 行動観察〜当たり前のことが当たり前にできない〜

早稲田・学習院・暁星・田園調布雙葉で道具を片付ける行動観察が出題されました。この背景として、入学してから基本的なことができない子があまりにも多いからです。子供の数が少なくなって目が行き届くあまり、親が手伝いすぎて当たり前のことが当たり前にできない。

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早稲田・学習院・暁星・田園調布雙葉で道具を片付ける行動観察が出題されました。
この背景として、入学してから基本的なことができない子があまりにも多いからです。子供の数が少なくなって目が行き届くあまり、親が手伝いすぎて当たり前のことが当たり前にできない。「手をかけず目をかける親になる」ことが必要です。

当研究所では、このような生活能力に関わる出題対策として、春期講習会から全教室で「生活巧緻性」の講習会を行います。

PART3-1 面接 〜暁星小学校〜

「志願理由」「どのようなお子様ですか?」「日ごろお子様とはどのように接していますか?」というような基本的な質問をする学校は準備することはできますが、付け焼刃ではきかない質問、言い換えれば予期せぬ質問をしてくる学校も増えてきています。

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「志願理由」「どのようなお子様ですか?」「日ごろお子様とはどのように接していますか?」というような基本的な質問をする学校は準備することはできますが、付け焼刃ではきかない質問、言い換えれば予期せぬ質問をしてくる学校も増えてきています。

その代表格である暁星・聖心の面接内容をお話しします。例えば暁星は、まず子供だけ先に入ります。そこで子どもにジャンケンで勝った順番に好きな座席を決めるように先生から指示される。
その後、両親が入室し、子供は席を決めるためにジャンケンをすることを親に説明します。ジャンケンの勝負の結果で決まった席に座ります。
座ると面接官が質問を始めます。
お子様に「○○君は将来何になりたいですか?」「二番目になりたいものは何ですか?」「暁星小学校のことで君から何か質問はありませんか?」などといろいろな質問をします。
それを受けて父親に「お父様はお子様の二番目になりたいものを聞いてどう思われますか」
このような質問まで準備するのは難しくアドリブで答えることになりますが、それでも普段からお子様との会話があれば、少しだけゆとりをもって答えることができます。そのちょっとしたゆとりが人柄となって落ち着いて話すことにつながります。

PART3-2 面接 〜聖心女子学院〜

聖心女子学院は、母親へ「物を大切にするということをどのように教えていますか?」「お子様が、頑張ってもなかなかできないことに直面した時、どのようにすればよいと教えていますか?」このような質問を今この場でお子様に説明してください、と言われます。

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聖心女子学院は、母親へ「物を大切にするということをどのように教えていますか?」「お子様が、頑張ってもなかなかできないことに直面した時、どのようにすればよいと教えていますか?」このような質問を今この場でお子様に説明してください、と言われます。

お子様へは「今、お母様は何とおっしゃいましたか?」と聞いて、母親の話が子供に伝わっているのかを確認します。
父親へは「『子は親の背中を見て育つ』と言いますが、父親としてどのような背中を見せていますか?」「本校では目には見えないものを大切にしていますが、それについてどのようにお考えですか?」
昨年同様、母子の会話があり日頃の母子の関わりを観られていると思います。お父様は、父親としてしっかりとした考えがあるかどうかを観られています。
繰り返しになりますが、この質問からも普段からの親子の会話を大切にしているご家庭を取りたいことが明白です。

04今年の結果はいかがでしたか?

最後に今年度の入試が終わってから二人の校長先生とお話しする機会がありました。
普段は私の方から質問することが多いのですが、今年は二人の校長先生から「以前はトップ合格からギリギリ合格、また不合格までそれなりの差があった。今はトップから不合格までの差がなくなってきている。ジャックさんでは、進路相談をして、受けても不合格になりそうな子は受けさせないということはあるのですか?」と聞かれました。

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最後に今年度の入試が終わってから二人の校長先生とお話しする機会がありました。
普段は私の方から質問することが多いのですが、今年は二人の校長先生から「以前はトップ合格からギリギリ合格、また不合格までそれなりの差があった。今はトップから不合格までの差がなくなってきている。ジャックさんでは、進路相談をして、受けても不合格になりそうな子は受けさせないということはあるのですか?」と聞かれました。

もちろん答えはNOですが、そんな連想をするぐらい僅差だったのでしょう。
昔と違い、試験傾向に合わせて学校別の授業を受けて、どのぐらいの順位にいるのか、合格するために足りないところは何なのかを学校別模擬テストを通じて確認するようになった今、これからますます紙一重の勝負になると思います。