入試の傾向 ジャックの教室から“2015年度 入試の傾向と分析”

01考査分野別

ペーパー

3年目の慶應横浜は、1次テストの難易度が上がりました。2年連続して話の記憶・欠所補完・積み木の数や空間知覚でしたが、点対称や線対称のマジックボックスや系列・指示の聞き取り等が出題されました。受験者がしっかり準備してくることに学校が対応し、傾向を変えたり難易度を上げたりするほか、より生活に密着した問題も現れました。暁星で「種が一つしかない果物は?」、横浜雙葉では「“シンデレラ”と“おむすびころりん”の両方に出てくる動物は?」、雙葉では「今から4番目(に行われる行事)の絵は?」、というように、小手先のペーパー対策では乗り切れないものが印象的です。(横浜元町教室 中山)

ノンペーパー

個別にじっくり観察する内容が目立ちました。テスト内容も勿論合否の判定に大きく影響しますが、お子様の立ち振る舞い、集中力、傾聴力、チャレンジ精神などの取り組みの様子も侮れません。5、6歳児の実生活で求められる巧緻性や習慣が学習院(スモックの着脱)、成城(傘の折りたたみ、箸使い)、白百合(お料理を作る動作の真似)で出題されました。また、桐朋学園の「立体四木並べ」や青山学院の「工夫して物を取る」などでは、思考錯誤してトライする姿勢も重視されていたと思われます。(四谷教室 松浦)

体操

求められる身体能力・運動技能が、より高まってきています。 慶應幼稚舎では、マークの周りを前右後ろ左と斜めに跳ぶ動きが出題されています。斜めに跳んでいるつもりでも真横に跳んでしまうお子様も多いようでした。成蹊では前後左右のジャンプ、学習院ではスキップをしながら前・上・後ろで(3拍子で)手を叩く、横浜雙葉ではフープに合わせて身体を捻りながらケンパーをする動きも出題されています。高度な運動にも対応できるように様々な運動経験を積んでいくことが大切です。(体操指導部 島田)

行動観察

首都圏私立小40校の内、今年度は38校で出題され、その重要度が更に上がったと思われます。内容は「自由遊び」から「集団で課題に取り組む」等多岐に渡り、特に今年度は「マイナス要素なく過ごせる子(=無難に仲良く過ごす)」に留まらず、「周囲に目を配り他者を思いやる力」「状況判断し行動を起こす力」までが求められました。早稲田実業では、「縦一列の5人組のそれぞれの体の間に1個ずつ風船を挟み歩調を合わせて歩く」や「井形に組んだ4本の棒の中央にボールを乗せて、力加減を調整しながら運ぶ」等、呼吸を合わせ相手の心に耳を傾けるような高度なものもありました。(国立教室 松村)

面接

昨年に続き、聖心では母子の会話を求められ、母子の係わりが見られました。暁星でも同じように両親との係わりを見られました。また、成蹊の両親面接では初めて、父の答えに関して母に意見を求められました。その逆も行われました。どのような価値観をもった家庭かが問われることが増えています。一問一答形式の準備ではなく、家庭の教育方針をしっかり話し合っておく必要があります。お子様に対しては、絵を見て「あなただったらこんな時はどうしますか?」など、表現力に加え、日常生活で多くの体験をしているか、道徳的な行動が取れるか、が問われる問題が目立ちました。(吉祥寺教室 横山)

埼玉

埼玉県内5校の試験内容はペーパー・体操・製作・行動観察テストが行われ、バランスのとれたお子様を見いだそうとする内容でした。今年度は、問題内容に各学校独自の特異性が薄くなる傾向が見られました。そのために都内校との併願がさらにしやすくなりました。埼玉県内5校は都内私立校の合格発表後まで延納でき、2回目・3回目入試も行われるので受験校の選択肢を拡げられると思います。(浦和教室 原)

神奈川

ペーパーは殆どの学校で例年通り「広範囲から出題されるスタイル」が踏襲されました。同様に、ある程度絞った範囲から出題する精華・桐蔭も例年通りの傾向でした。ただ、内容的には訓練していれば出来るというものではなく、問題の意味を理解する力が求められたことが今年の特徴です。行動観察ではゲームや相談を通した社会性が鍵となり、面接や面接課題と合わせて一人ひとりの言動から校風に沿う子を観ようとする意図が感じられました。(あざみ野教室 小川)

幼稚園

今年も暁星・若葉会・かたばみ等でスモックの着脱がありました。又、青山では絵本を見ながらホットケーキを作っている場面で、「何をしているのか?」「卵を割ったことはあるか?」という質問を受けました。白百合でも、箸を使ってのスポンジ掴み・お盆を運ぶ・紐を三つ編みにするといった、母子の関わりの中でも、これまでの生活の中での経験を問われているような出題がありました。数量や図形や記憶など知能面も大切ですが、その年齢に必要な生活習慣が身につくよう、丁寧に育てられてきたお子様を求めているように思います。(広尾教室 加藤)

02学校別入試概要

青山学院初等部
ノンペーパーだが、個別テストの内容は難しい。記憶・推理・具体物を使った工夫の問題など、他校に類を見ない青山独特のものが出題される。行動観察の考査は3時間と長い。協調性や積極性が求められる。願書と両親面接が重要。
開智学園総合部
第一志望者と併願志望者の希望をとり考査項目の内容を変えて試験が行われる。選出方法は基準点をクリアした者の中から各項目の上位者と全項目の合計点の上位者から決まる。第一志望者は開智小独自のBペーパー(立体推理や思考問題)に慣れておく必要がある。個別では言語が重要視される。
学習院初等科
運動では見本を見た後、同じ動きを行う課題が出された。見本はゆっくり行ったが口頭での指示はない。見本の速さなどを全体的に読み取れるかがポイント。個別では言語・巧緻性・記憶等、長期的に準備をしておく必要がある問題が出題された。
暁星小学校
約15分でペーパー9枚。言語・常識は広分野から出題。知識のみならず経験が必要。面接では、聞く・話す・伝える・考えを発表する力を問われ、両親は子の答えに対する助言や意見を聞かれる。事前準備は難しく、日頃からの関わり方が大切である。体操は例年通り。
国立学園小学校
テストは授業形式。話を聞いた後、自分の考えや感想を一人ずつ先生に耳元で伝える。鏡に映ったパズルを組む等、巧緻性と思考力も問われ、ペーパーは広範囲に、一見何をするのかわからない問題。話を理解する力、思考力が求められる。
慶應義塾幼稚舎
トンネルやトランポリン等体操器具を駆使したサーキットと模倣体操の内容に変化が見られた。行動観察では、言語・身体表現力や観察力・仲間と協力する心が育まれているか、絵画では子供らしい課題を通して切る・結ぶ・折る等の製作巧緻性と豊かな生活体験が見られた。
慶應義塾横浜初等部
1次はペーパーテスト。話の理解力・推理力・常識力が求められた。2次の体操はほぼ全日同一内容で運動能力に加え即応力と表現力、製作では日替り課題と質疑応答により発想力・言語力・課題の理解力が問われた。その製作で遊ぶ行動観察では友達との関わり方が鍵となる。
昭和女子大学附属昭和小学校
AO:親子で行われる行動観察が特徴。ペープサート製作を通して、家族の関わりや雰囲気、他家族との関わり方が見られる。製作後に他家族に向けて発表がある。自分たちの発表だけでなく、他家族の発表もきちんと聞く姿勢が大切。子供の考査は模倣ダンスと質疑応答が行われる。
一般:巧緻性、運動能力共に年齢にふさわしい発達であれば充分対応できるが、生活を通して身についた所作、能力、知識が必要な内容なので付け焼き刃の準備では通用しない。自分で考え工夫すること、自分の言葉でしっかり人に伝える力、コミュニケーション能力を培っておきたい。
白百合学園小学校
面接は答えた内容から発展し、子への質問数はかなり多い。ペーパーの枚数は多く、集中力を求められる。今年度の個別では短時間で行う製作が2項目あった。その他ペーパー的要素を含むもの、音を聞き取る指示行動など幅広い分野が出題された。行動観察は例年通り。
精華小学校
考査全般に渡り、スピード・正確性が求められる。体操は脚力を見る内容、ペーパーは数、図形の回転・重さ比べが出題された。個別では例年の絵の記憶にかわり、音声による話の記憶が行われた。課題画やお話作りでは発想力や言語能力が見られている。
成蹊小学校
ペーパーは長い話の記憶と図形(2枚)の2問で内容は男女異なる。集中して粘り強く解く力が必要。今年は男女共選択肢から答えを選ぶのではなく、自分で答えを描く問題だった。行動観察は協調性と楽しく参加出来るかがポイントで、個別の箸使いも出題された。体操はボールに慣れておくことが必要。
成城学園初等学校
3日間の考査で1日目は親子面接、2日目は個別、3日目は個別と体操を行う。個別は具体物を使い、数・積木・比較・推理・常識・記憶等出題数が多い。社会性・生活力・表現力・感性感覚が求められるので、ペーパー勉強だけでなく、生活体験で身に付けた力と前向きな姿勢が大切。両親面接が非常に重要である。
聖心女子学院初等科
考査や面接の総合点で合否が決まる実力校。ペーパー、集団行動観察重視。ペーパーは近年、話の記憶、数、言語、常識、図形、推理思考など全ての分野からバランスよく出題される。集団行動観察の決め手は協調性。親子面接では母子の会話もあり、母子関係も観られた。
西武学園文理小学校
受付から校門を出るまで全ての行動を評価しているので、親子共々意識してテストに臨むことが大切。ペーパーは全項目で聞き取る力・思考力・語彙力を要する問題が多い。絵画は薄い線をなぞる・指示された色で線画を塗る指示と夏の思い出を描く課題が出された。
洗足学園小学校
ペーパー校であるが、行動観察も重視されている。また体操は指示項目が多いのが特徴。聞き取る力と素早く行動に移す力、また丁寧に線をはみださずに動く力など緩急をつけて動くことが要求される。また、教室移動の際にふざけないことが重要である。
田園調布雙葉小学校
今年度より1日のみの試験となった。面接は2部屋の面接を受けることが特徴。ペーパーはそれほど難易度は高くないが、聞きとってミスなくとけることが必要。個別は言語能力・記憶が出題された。行動観察は協調性がみられたが、それ以外にも工作の力も必要と思われる。
東京女学館小学校
AO:学校行事には必ず参加し教育方針、教育内容について十分に理解を深め、各家庭らしい推薦書を書きまとめること。例年子供の口頭試問では提出した推薦書からの質問も多く、その対策も早めにしておく必要がある。第一志望者はAO型と一般の併願が望ましい。
一般:小集団テストは1グループの人数が少なく、個別に近い形態で行われた。ペーパーは数・図形・聞き取りと広範囲に出題され難易度が上がった。絵画・体操の対策も必須。母子行動観察は近年身体表現やダンス・手遊び歌などを中心に出題されている。
東京都市大学付属小学校
ペーパーテスト・模倣体操・指示製作と行動観察が行われ、考査中に並行して両親面接を実施。ペーパーは長い話の記憶・言語・比較・図形・模写等でじっくりと考える問題とスピード力を求める問題が出題された。各項目平均して得点する事が必要だが、特にペーパー力を問われる。
桐朋小学校
1次考査は個別テスト。内容は言語力・数量・比較・巧緻性・常識など、9種類が出題された。あまり時間をかけずに即答する力が求められた。2次考査は行動観察・製作・運動・巧緻性。行動観察では協調性と指示をしっかり聞き取る力が求められた。サーキットの間に箸使いが行われたのも特徴的。
東洋英和女学院小学部
高倍率が予想されたが従来とほぼ同様の入試。ペーパーでは推理系の難問が出題された。行動観察では、箸使い・ひも結び等の生活巧緻性や折り紙・運筆・ハサミ等製作巧緻性、スキップ・ボール投げではバランス良く身体能力が育まれているかも問われ幅広い出題であった。
日本女子大学附属豊明小学校
①行動観察の比重は高く、リーダーシップよりも皆で協力できる事を重視。②ペーパー・巧緻性は基本的な問題ではあるが問題数は多い。根気よく丁寧に行うことが大切。③親子面接では事前提出の面接資料から質問される。
雙葉小学校
ペーパーは6枚程度で少なめだが、範囲が広いため全ての領域について理解を深める必要がある。面接では、子に絵を見せ、いくつか質問する。状況判断・表現力などを見ていると思われる。両親への質問は少なく、面接資料に記入する志望理由や教育方針が重要となる。
森村学園初等部
ペーパーは話の記憶・数・図形・言語・常識など20枚以上。国語・算数・理科社会分野からバランスよく多岐に亘って出題されるため幅広い範囲の準備が必要。絵画製作は巧緻性と指示の聞き取りがポイントとなる。行動観察では協調性、質疑応答では即答力が求められた。
横浜雙葉小学校
数・図形・言語など9種類のペーパーが出題された。体操、課題製作等を通じて総合的な力が試される。お弁当を持参し約6時間の考査の中で途切れない集中力に加え、行動観察では我慢強さ、自由遊びでは節度ある行動が求められる。面接中の課題は親子で神経衰弱を行った。
立教小学校
4分野から出題。①国語力は集団で絵本をスクリーンで見た後、個別で内容について質問されカードを使ったり、口頭で回答。②行動観察は集団で約束が守れるかどうか。③図形・数の思考力はブロック等の具体物を使って基本から応用問題へ発展。④運動力は身体の発育状況をみる。
立教女学院小学校
ペーパーは問題量が多くスピードも求められる。例年理科的常識・生活常識問題があり、日頃からの体験が必要。今年は童謡を聴いて答える問題もあった。個別は過去問から出題されることが多く、過去問対策はペーパー同様欠かせない。体操は今年は模倣体操も行われた。
早稲田実業学校初等部
ペーパー・絵画製作・運動・集団行動観察に加え生活習慣・巧緻性テストが特徴。束ねる、紐結び、折る、ちぎる、貼る、身支度や片付け等、生活体験の豊富さと手際の良さで差がつく。全項目共指示を聞き取り理解する力、観察力、自ら考え迅速に行動する力が必須。