JAC幼児教育研究所

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年頭所感 2019

2019年1月3日 09:00

三つの幸せ

今の世の中、戦術はあっても、戦略がないように思えてなりません。例えば政治を見ても、将来にわたってこの国をどうすべきかという大きなビジョンは見当たらず、小手先の戦術で思いを叶えようとする政治家が目立ちます。
教育も同様です。いじめ、登校拒否、落ちこぼれなど、目の前の課題を解消するための議論ばかりが繰り返され、やる気のある優秀な生徒を増やすことにはあまり注力していないように感じられます。また、母親にしても、我が子の将来に何のビジョンも持たないまま、ただただ有名私立に合格させたいと願い、そのためにはどこの塾に通えば良いかと必死に思案する姿が目立ちます。これでは、本末転倒です。戦略のない戦術ほど虚しいものはありません。

この一年、合格を目標にし、勝ち取るために最大限の努力をすることは言うまでもないのですが、「合格したら幸せ、不合格になったら不幸せ」というのは間違っているように思います。相田みつを氏の言葉を借りれば、『幸せは、自分の心が決める』もの。合否は学校が決めるものです。学校が、あなたの幸せを決めることはできないのです。

さて、ついこの間まで、食事も、お着替えも、排泄さえも母親任せだった幼い子が、年齢以上に自立していく――ボールがつけるようになる、縄跳びや逆上がりができるようになる、難しいパズルや折り紙ができるようになる――これが受験です。そこで周囲にいる大人、とりわけ保護者の方には、子どもの小さな進化にも敏感に気づき、「できるようになって、すごい!」と、心から喜ぶようにして欲しいのです。なぜなら、そうすることで、”できるようになる”ことに喜びを感じ、できるようになるための努力を厭わない子になっていくからなのです。つまり、何事であれ、「できない」→「できるようになりたい」→「努力する」という良い循環が、その子の中で始まるのです。

受験は、長い子育ての一つの通過点にしか過ぎません。だからこそ、この機会に、合否よりももっと大きなもの、すなわち、”できるようになる幸せ”を、子ども達に学んで欲しいと思います。壁にぶつかった時、「頑張ればできるのよ」と声をかけるのは容易ですが、頑張ってできるようになった経験が無い子にとっては、その言葉は何の意味も持たないのですから。

また、最近の子にとっては、暖かい家も、美味しい食事も、健康も、かわいい洋服も、プレゼントも、みんな当たり前。そのために、まだ手にしていないものばかりに目が行き、すでに手にしているものには、ちっとも感謝しないようになってしまいました。これでは、いつまでたっても心は満たされません。とても不幸なことです。

もし、子ども達が幼い頃から「してもらう幸せ」を感じながら育つことができれば、それは次第に「してあげる幸せ」につながり、さらには、他人の喜びを自分のことのように喜べる人間へと成長していくでしょう。そういう人間にとっては、してもらった時も、してあげた時も、できるようになった時も、三つすべてが幸せな時間になる――とても幸福な人生を送れるに違いありません。

今の日本には、『一日ひとつ、他人が喜ぶことすること』を習慣にする子育てが必要ではないだろうか、そう強く感じる2019年の年頭です。

 

〜次回の掲載は1月10日(木)の予定です〜

キーワード:小学校受験