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学校訪問

みんなキラキラ

理事・吉岡俊樹が、保護者の方の視点に立って学校・先生・児童たちの魅力をお伝えするページです。いろいろな学校のことをもっと知りたいというご要望にお応えして、新設校や今注目されている学校を訪問し、先生方にお話を伺います。

第5回

さとえ学園小学校
(取材:2009年7月)

角田陸男 校長

学校法人佐藤栄学園 さとえ学園小学校
1959(昭和34)年に埼玉自動車整備技術学校を開校。1971年、佐藤栄学園として学校法人の認可取得。その後、前理事長(故)佐藤栄太郎氏によって埼玉栄高等学校、埼玉栄東高等学校(現栄東高等学校)、花咲徳栄高等学校、埼玉短期大学、栄東中学校、専門学校日本美術学校(現日本美術専門学校)、平成国際大学、栄北高等学校、埼玉栄中学校、さとえ学園小学校、大宮法科大学院大学が設立された。同小学校の開校は2003年。2007年には新校舎とプールが落成。
http://www.satoe.ed.jp/

—学校説明会での先生のお話のなか「小学校に上がる前の家庭教育が非常に大事で、特に食生活が重要だ」というお話を興味深く拝聴しました。その点について先生のお考えをもう少しお聞かせいただけますか。

角田:はい。学習習慣の前にまず生活習慣が身についていないと、あらゆることに対して忍耐力が薄れてしまいます。これを「耐性虚弱」と呼びますが、たとえば欲しいものが手に入らないと、ふてくされたりかんしゃくを起こす。あるいは物ごとが自分の思い通りにならないと、わがままな態度になる。飽きっぽくて集中力に欠けるといったことも、すべて耐性虚弱の現れです。これを克服するには、早いうちから正しい生活習慣を身につけなければなりません。昨今、「子どもの教育にお金はかけるが、手はかけない」という風潮が蔓延しつつあるように感じます。しかし、やはり子どもは手をかけて育てることが大事なのです。 百マス計算で有名な隂山英男先生が、生活習慣と学力の関係を調べるために小学校5年生のデータを取ったことがあるのですが、大きく影響しているのが朝食でした。毎日朝食を食べる子、時々食べる子、食べない子を比べると、知能指数に歴然と差が出たのです 。

—朝食をとる習慣を確立している家庭のお子さんは知能指数が高いというわけですね。

角田:そうです。ただし朝食ならなんでもいいというのではなく、温かいもの、湯気の立つものを食べている子ほど高いんです。ロールパンにバターを塗って食べさせるのではなく、手をかけた一品をつけることが大事なんですね。私は朝、スクールバスに乗って子どもたちと一緒に学校に来るものですから、子どもたちの話が耳に入ってくるんですね。その話題から察しても、やはり朝ごはんが貧弱だと実感します。こういうことは家庭での生活習慣なんです。小学校5年生のデータでは早寝早起の習慣も学力に直結しています。また、私が痛感しているのは幼稚園、小学校の段階で読書習慣を身につけさせることの重要性です。

—御校で週1時間、読書の時間を設けているのもそういう理由からでしょうか。

角田:はい。小学校での読書体験も重要ですが、実は就学前の家庭での読み聞かせというのがその後の読書習慣の鍵を握ると私は思っています。通常は3~5歳になると子どもを寝かせるときに、お母さん、あるいはお父さんが読み聞かせを始めますよね。その体験をベースにして多読・乱読という形につなげていくことが肝要です。最初は児童書みたいな簡単なもので構わない。そこからだんだんといろんな興味を広げていけるのが読書です。読書量は学力に比例します。これにもデータがありまして、月に10冊までは比例するという結果があります。10冊以上になると飽和してしまうのですが、それ以下の冊数ですと明らかに比例するのです。読書量は国語力に密接に影響するということは誰でも想像できると思いますが、それだけではありません。算数にも知能指数にも影響するのです。

—読書量が知能指数にも関係しているのですか。

角田:はい。一時は「IQよりEQ(Emotionally Intelligence Quotient=情動指数)だ」などという風潮もあり、知能指数の評価が低くなったこともありました。知能指数が生まれつき決まっている脳のエンジンの大きさだと捉えると、反発を感じる人もいるかもしれませんが、エンジンの大きさではなく、そのときエンジンがどれだけ回転しているか計るものなんですね。読書の量が脳のエンジンを回転させるようになり、それが脳のパワーアップにつながるのです。そしてパワーアップする脳には可能性があるのです。

—子どもたちの将来の可能性を広げるためにも幼い頃からの生活習慣が重要であることはよくわかりました。けれど入学前の生活習慣について、保護者の方に先生の思いを伝える機会はそれほど多くないのではありませんか。

角田:保護者の方に私の教育論を伝えることができるのが、学校説明会という場です。教育で大切なことはなにか。教育の最終ゴールは、いい大学に合格するということではありません。私は4月に当校に赴任する前は筑波大の附属に34年間おりましたので、東大に入った子たちをたくさん見てきましたが、それが最終目的ではないんです。東大から外務省に入るのが必ずしもエリートとはいえません。最終的にリーダーになる子をつくるというのがこの学校の目的なのです。筑波もエリートを育てる学校ですが、いい大学に入ることとエリートはイコールではありません。それではエリートとは何かというと、社会に出て、困っている人を助けることができる人だと私は言い続けてきました。さとえ学園小学校には1学年90人の子どもたちがいますが、その子たちがすべてリーダーになるような教育をしていく。その根底にある教育論をこれからも機会あるごとに保護者の方にお伝えしていこうと思っています。

—御校の大きな特徴として課外活動である複合型教育が挙げられます。これも子どもの可能性を拓く画期的な試みだと思いますが、少し説明していただけますか。

角田:複合型教育は、当校が日本で初めて採り入れたオリジナル制度で、「学習プログラム」「情操教育プログラム」「さとえプログラム」の3つで構成されています。学習プログラムは、英語や算数、国語などの学習教科をさらに伸ばしていくものですが、学校での正規の授業を終えたあとに行うもので、授業時数には入っていません。情操教育プログラムは、バレエ、ヴァイオリン、絵画、空手、水泳など、通常、いわゆるお稽古ごととして家庭で習わせるものをプログラムとして用意しており、指導するのはそれぞれの分野のプロの先生です。子どもたちの早期発達段階からこれらのプログラムを用意することで、子どもたちの個性に応じた才能を伸ばせる環境を揃えています。
さとえプログラムは、ご両親が二人とも働いていらっしゃる家庭のお子さんを夕方6時までお預かりするというものです。複合型教育は、希望者のみ受講するという完全選択制なのですが、1年生で87%、2年生93%、3年生90%、4年生79%、5年生51%、6年生48%がなんらかの形で複合教育を受講しています。5、6年生の受講率が下がっているのは進学を視野にいれた活動が増えてくるためだと考えられます。

—そこで中学校受験についてもお伺いしたいと思います。御校には同法人内に中学が2校あります。それでも第一期の多くが私立中学を受験し、外部に出ています。御校としては、内部校への進学を望むのか、受験を奨励するのか、どちらでしょうか。

角田:なかなか難しい質問です。当学校法人内には法科大学院まであるのですから、一貫教育が考えられないわけではありませんが、現状では内部校への進学が義務づけられているわけではありません。ですから有名私学あるいは、国立へ出るという希望があれば、それを認めるという形です。内部校の中学・高校も一貫校と捉えているのではなく、系列校という位置づけと考えているというのが正直なところです。

—学校説明会ではオリジナルテキストを使用した学習指導が紹介されていましたが、全学年・全教科オリジナルテキストを使っているのでしょうか。

角田:すべてオリジナルを使っています。私立の学校はそういうところが少なくないと思います。ただ、オリジナルの教科書で本当に実力がつくのかという不安を持たれるのも当然だと思いますので、私が当校に来た4月、最初にやったことは、新6年生全員に全国学力標準検査(NRT)を受けてもらうことでした。全国標準偏差値の平均は50ですが、さとえの新6年生は、ほとんどの子が偏差値60-70でしたので、オリジナルテキストを使った教育は間違っていないということがいえると思います。やはり全体での位置づけがどうかという指標がないと、オリジナルテキストがいいものであるかどうか外に向けて自信をもっていえませんので、NRTによる評価は今後も続けていこうと思います。

—御校に足を踏み入れたご父兄は誰しも設備の充実ぶりに目を見張るのではないかと思います。プラネタリウムやアクアミュージアムはもちろん、校舎のデザインから廊下に置かれたオブジェにいたるまで豪華なしつらえですが、この目的はどこにありますか。

角田:佐藤栄太郎先生のお考えによるもので、木材ひとつにしても一流のものを使いたいというお気持ちだったと思います。ナマの教育といいましょうか、子どものうちから一流のもの、本物を見せるという理念です。
私が筑波の附属にいたときのことでしたが、子どもたちに昆虫の図を描かせると、みんな正しく描けないんですね。実際に昆虫を見ていない子は描けないんです。やはり本物を見る機会を持つということが大きいのです。この学校には、プラネタリウムやアクアミュージアムなど充実した設備がありますから、あとは教員がどれだけそれを有効利用していくかということが課題だと思います。

—モチベーションの高め方によって、いかようにも子どもたちが伸びていく環境が整っていますね。

角田:学習意欲論というのは、常に議論の的になります。けれど、子どもたちにやる気を起こさせるものは何かというと、結局は教師なんですね。教師の魅力です。そこで副校長とも相談の結果、教師の指導力をアップさせるために研修機会を設けることにしました。具体的には有名小学校の算数と国語の先生に模範授業をしていただき、また当校の授業をみて講評していただくというものです。今年は9月以降に行いますが、今後は年に3回ほどその機会を設けて教師のスキルアップを図っていくつもりです。

取材を終えて

さとえ学園と聞けば「充実した教育設備」という印象が先行します。子どものためになることなら惜しみなくお金をつぎ込む学校であることは、間違いないと思います。しかし実際に足を踏み入れてみると、豪華な施設に勝るとも劣らないしっかりとした理論、理念、カリキュラムに惹きつけられます。特に、校長先生が「生活習慣」「家庭教育」を強調されていたのが印象に残ります。「子どもは手をかけて育てなさい」と言う言葉は、教育の原点でしょう。また、一貫校という枠に押し込めない姿勢には、有数の進学校としてのプライドを感じました。
ぜひ実際に足を運んで、中身を見て欲しい学校だと思いました。(吉岡俊樹)

写真で紹介

新校舎の教室は、半分素通しになっており、開放感のあるつくりになっている。右は「ゼミ室」と呼ばれる少人数用教室で、習熟度別授業や複合教育で使われる。

英語の授業と複合教育の英語の授業で使う英語教室。右は、ドッヂボール大会当日に「一致団結」を誓ったクラスの様子。

校内に設けられたアクアミュージアム。熱帯魚、淡水魚、深海魚など250種・約800尾を飼育する(取材当日はメンテナンスの日であった)。

屋上緑化プログラムとして始めた屋上庭園。風力発電用のプロペラと太陽光発電用のパネルも屋上に設置されている。

校内のプラネタリウム。学期1~2回はここで季節の星座を上映する。

日本庭園を併せ持つ礼法室。道徳の授業や国語で学ぶ百人一首などはこの和室で行うという。